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荷を下ろしトラック軽々駆ってゆく無頼平野に陽は沈むなり
仕事柄トラックを運転することがある。
概ね納品のためだがほどほどの長距離運転は楽しい。
ナビゲーションはついてないけれど
届けなれた客先であれば抜け道も分かる。
田んぼの真ん中をのろのろ走る。
関東平野はつくづく広い。
荷物を下ろした後はハンドルも荷台も軽く
往路ほど慎重にならない。
人生も同じ。
背負いこんだ荷物を少しずつ下ろして生きてゆく。
すでにわが人生は夕暮れどき。
まさに逢魔が時だけに
これからは魔物に逢わないように
気をつけよう。
わが無頼平野を遮るものはない。
石川幸雄 1964年東京生まれ
詩歌探究社「蓮」代表、個人誌「晴詠」発行人
十月会会員、板橋歌話会役員、現代歌人協会会員
日本短歌総研上席研究員
歌集に『解体心書』、『百年猶予』ほか。
研究書に田島邦彦研究「一輪車」
入門書に『誰にも聞けない短歌の技法Q&A』がある