詩歌探究社 蓮 (SHIIKATANKYUSYA HASU)

詩歌探究社「蓮」は短歌を中心とした文学を探究してゆきます。

バラスト水

2018-10-12 18:34:37 | 千駄記



ひと晩中われ十月の風を聞く悪い奴ほどよく眠るとか


心にはその人なりの器がある

金属製であったり木製であったり
陶器や土器であったり材質も大きさも
人それぞれ

おそらくぼくの器は年代物の小さな土器だ

以前にも増してうたを作ったり
鳥の写真を撮ったりしているのは

空っぽになってしまった器を
満たそうとしているのだろう

ぼくにとってうたや鳥の写真は
タンカーのバラスト水のようなもの

器が空っぽのままでは
立っていることすらままならないのだ


石川幸雄 1964年東京生まれ
詩歌探究社「蓮」代表、個人誌「晴詠」発行人
十月会会員、板橋歌話会役員、現代歌人協会会員
日本短歌総研上席研究員
歌集に『解体心書』、『百年猶予』ほか。
研究書に田島邦彦研究「一輪車」
入門書に『誰にも聞けない短歌の技法Q&A』がある

人生劇場

2018-10-12 09:45:31 | 千駄記



得なければ失くしてしまう惨めさを不安恐れを知らなくて済む


いつも近所の土手で寝転んでいるような
こどもであったからか
担任にせめて本を読めと言われた

無責任、無気力、無関心などと
言われる口であったのに人のアドバイスには従う

本を読むといってもバカの特徴の一つは
根気がないことである。一念発起して本屋へ行った

字が少なければ読めるだろうと探していると
彌生書房の詩集が並んでいた。
草野心平、金子光晴、八木重吉などがあったように思う
その中から名前の格好いい「立原道造」を選んだ

それがぼくの人生劇場の始まりだった
最近、尊敬する方から言葉をいただいた
人生劇場の勝負所
この言葉もまた私を撃ち抜いた



石川幸雄 1964年東京生まれ
詩歌探究社「蓮」代表、個人誌「晴詠」発行人
十月会会員、板橋歌話会役員、現代歌人協会会員
日本短歌総研上席研究員
歌集に『解体心書』、『百年猶予』ほか。
研究書に田島邦彦研究「一輪車」
入門書に『誰にも聞けない短歌の技法Q&A』がある