![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/f2/56f04bdb19ecdce50bc48c687800ee87.jpg)
授業が終わって教室内が喧騒に包まれていても、柳瀬健太は腕組みをしたままじっとその場に座っていた。
頭の中は「こんなはずじゃなかった」と、苛立ちと後悔でいっぱいなのだ。
せめて過去問でも手に入れようと‥あんなことまでしたってのに‥くそっ‥
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親からの就活へのプレッシャー、受からない卒業試験、思い通りにならない物事と人間関係‥。
せめて赤山雪の持つ過去問を手に入れれば、ここから脱却出来ると思ったのにーー‥。
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そう思った時、突然視界に赤山雪が飛び込んで来た。
口元を歪める健太を、じっと見つめる彼女‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/35/d8d9616638f24fa76a842087aafac672.jpg)
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心を読まれたかのようなタイミングに、健太は驚いて口をあんぐりと開けた。
しかしすぐに笑顔を浮かべると、先輩らしくこう声を掛ける。
「ん~~?赤山ぁ!どうしたぁ~?」「あの、先輩」
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雪は淡々としたトーンで、健太に向かって話を続けた。
「終わってから時間ありますか?」「ん?なんでだ?」
「ちょっと折り入って話が‥」
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「なんだ?俺に相談事か~?HAHAHA!」
「はいまぁ‥似たようなものです‥」
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相変わらずの健太のオーバーアクションに雪は引き気味だったが、
その要望は決して取り下げたりはしなかった。
「あーでもほら!俺これから連続講義で‥」
「それは待ちますので」
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雪はそうあっさり返すと、お辞儀をしながら健太の元を離れて行った。
「それじゃ後で、講義室の裏の駐車場でお待ちしてます」
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「赤山雪グループ」のメンツの元に、こうして雪は帰って行った。
(話を聞いていたらしい柳は雪のことを凝視し、聡美と太一は未だにいがみ合っている)
健太は笑顔を浮かべながら、とある考えが頭の中に広がるのを感じる。
「‥‥‥‥」
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けれどそれは取り越し苦労に過ぎないだろうと、健太は自身を擁護しこう呟いた。
「まさか‥んなワケ‥」
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赤山雪は、自分が過去問を盗んだ張本人だと気づいているだろうか?
いやまさかそんなわけはない。自分の行動は完璧だったはず‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/ed/3a13af8bb2b63a920d12437a743a0e36.jpg)
同時刻、キャンパス近くでこの二人がまた顔を合わせていた。
「てことは‥あの本、お前がぁ~?」
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「いやその‥」
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佐藤広隆と河村亮。この奇妙な組み合わせも、だんだんとシックリ来るようになっていた。
「お前なぁ!良くしてやるのは構わねぇけどよ、
現実的に欲しがってるモンやりゃいいじゃねーかよ。静香の場合は金!無条件で金なんだよ!」
「いや俺はスポンサーじゃないし‥どうして金出さなきゃいけないんだよ!てかそれも既に何度も‥
それにアンタも、静香さんの弱点教えてくれるって言ったのに会ってもメシ奢らされるだけじゃないか!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/ff/5af1e8efcf53fac3e4100f3ef951aa62.jpg)
亮は幾分強引に佐藤の肩を引き寄せると、手で金のマークを作りながらこう続ける。
「いやいやアイツをそそのかすのに必要なのはコレ。コレだっての」
「いやいやそんなモンで人をそそのかしてどーする?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/19/a0b840bf63e0516173c4c089f235281a.jpg)
何度亮が「静香が喜ぶのは金」と教えても、佐藤は一向に納得しない。
若干焦れた亮は、呆れながら彼にこう言った。
「あーもう!この甘ちゃんが!マジでわかんねーのか?!まどろっこしいなぁ!
静香のことあんなに見てんのに分かんねーのか?あぁ?!弟のオレが言うんだから‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/aa/e9ceb73007fe1e8c6c0d4bd2fcf95f5c.jpg)
間違いない、と亮が言う前に、佐藤はこんな質問をぶつけた。
「それじゃ静香さんは、どうして授業に来るんだよ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/28/743791e228e8aba0efb3f38d0bdbf802.jpg)
「えっ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/b6/48a1a557f134225cfabdd36079b01891.jpg)
予想外の問いに、目を丸くする亮。
佐藤は真面目な表情で、その質問をもう一度投げかけた。
「金にしか目が無いなら、どうして彼女は美術の授業を聴きに来るんだよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/b7/162a32ba675564201deed5ea5ffd5e22.jpg)
瞼の裏に、いつか目にした彼女が消えない。
あの人は何故、美術の本を目にした時、あんな目をしていたんだろうーー‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/39/ddc1caf0e08305fe1973e4c2207d0445.jpg)
「そりゃ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/a8/e4cafb91c197634241cae27677957f15.jpg)
亮はその続きを口にしようとしたが、続けられなかった。
自身の奥に沈めてある気持ちが、その先の言葉を見失わせる‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a7/e63b0175187595a16a0a8621c5b5e00b.jpg)
亮は暫く言葉を飲んだが、じきに再び軽い調子に戻って肩を竦めた。
「そりゃあさぁ‥」
「お?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/de/93b6c5607aa7b5ac0f94ac14a4f128d7.jpg)
するとそんな佐藤と亮の前に、柳楓が現れた。
「佐藤!ここで何してんだよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/1a/01dc7eb5ce084293a85724c299c7b33b.jpg)
柳は忙しない様子で、佐藤に向かって早口で質問する。
「隣誰?」「え?ただの知り合い‥」「あーもういいや!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/3e/3eb053ed89d74d58faab54a44531cd0d.jpg)
「今すぐ、俺と一緒に来てくれ!」「え?どうした?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/10/7b65ba141765bd568f175fe51268e25c.jpg)
尋常ではないその様子に、佐藤も勿論亮まで目を剥いた。
そして三人は、柳の話すその場所へと走って行く‥。
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<あの人は何故>でした。
佐藤先輩は優しい人ですね‥。
静香の本当の所を見極めているからこそ、彼女を放っておけないんでしょうね。
それに引き換え健太‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face2_lose_s.gif)
さて次回、遂に雪が健太を追い詰めますよ~
次回、<健太との対決(1)>です。
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