時を同じくして、復学したもう一人の主人公、青田先輩。
彼の物語もここから始まります。
青田淳 休学明け三年生
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/d1/40188bc0bdaad05f1bb260537d4b0257.jpg)
復学して初めて大学に出てきた彼は、廊下で一番親しい友人である柳に出会い、久しぶりだなと声をかけられる。
「今夜の飲み会来るんだろ?」
と言われ、
「もちろん」
と笑って答える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/82/09ed64b6881841822bbbfd41278d0be3.jpg)
遅れて到着した彼を、かつてのメンバー、新しい学生達が一斉に迎えた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/d8/e2cb3ed757740829e6ab07bbf23219da.jpg)
「久しぶりだな!元気だった?」
「髪伸びたなぁ、オレのこと覚えてるか?」
「青田先輩こんばんは!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/e1/5212a00c06c06e02a7f21c05aba81740.jpg)
彼の周りにはあっという間に人だかりが出来、彼はそれに笑顔を向ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/36/8474c84e9b06625ec527e57bf126b8be.jpg)
口にした言葉はたった一言だけ、「ああ」と言うだけだったけれど。
休学前からお世話になっていた健太先輩は淳の復学を喜び、もう一人の復学生を紹介しようと声をかけた。
遠くでぼんやりとした女学生が、よろしくお願いしますと言った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/27/92306109c8c4257b8a0adabff5872612.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/4e/d79bcdfe437de53a66c713b5f977fc27.jpg)
淳もよろしくと挨拶し、すぐにまた健太先輩との話に戻った。
共通の先輩の話、学生連合の会合の話、男子学生だけの飲み会の話、
健太先輩と、前に座る柳との会話は、二年ぶりのせいか色々尽きることはない。
積もる話は沢山あったが、新入生の女の子達が隣りに座ってきたせいで、ちっとも話は進まなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9e/57257b645e96997cc3f8b12078ca9675.jpg)
挙句、無遠慮にも新入生は自分に密着する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/57/c8a81717c7ad23130a167c1d323ca9a7.jpg)
ドンガラガッシャーン!
グラスは倒れ、新入生のスカートは水でびしょ濡れになった。
女学生は席を外し、騒然となったこの場も自分が片付けることでうまく治まる。
淳は手を拭いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/e5/f35507d12019ec5f61cb8ce6f26c8c51.jpg)
飲み会は続く。
ガヤガヤと人々は会話を続ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/23/87d5e745c8679db5199da670612ae68d.jpg)
そんな中、遠くの席がにわかに騒がしくなった。
先ほどの復学生が面白いことをやると言う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/bc/ffeb98103a444cab032bdb11cbd18763.jpg)
その子はサンチュに入った焼酎を飲み干し、口からは酒が滴った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/61/cdbb9d1bbe46a88730b75603bb77ce06.jpg)
知らず知らずの内に、顔をしかめていたかもしれない。
「あいつ結構面白いだろ?」という健太先輩の会話には応えず、また他の話題で話は続いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/fa/c4de19f000982427e1402502d3d778ca.jpg)
先輩、こんばんは!私達のこと覚えてますか?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/4b/45e647517d276442371eb1a17db0ac0a.jpg)
キャハハハ、飲むぞー! ちょ、トイレ‥マジ吐きそう
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/ca/6959c4a364e902fcb6acd92377ee0ce1.jpg)
金集めとく? 青田が出してくれんじゃね?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/8c/58e97539715212fc11b177c3bdd6fc5a.jpg)
目は閉じることが出来ても、耳は閉じられないのは生物の進化か、人類の退化か。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/f1/d2c4108b02c201eeff579c4ae6b89c38.jpg)
飲み会は続く。
ノイズを撒き散らしながら。
そんな自分を見て、柳が「眠そうだな」と笑った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/2d/6464167736b8412e2e81e38229c53dd3.jpg)
「大学に戻った感想は?」
と聞かれ、
「何も変わってないのな」
と答える。
その時ポケットの携帯電話が震え、ちょっと電話してくると席を立った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/a9/b22067531dd13093fda099caa680e34a.jpg)
電話の主は、幼馴染みの河村静香だった。
いつも不注意で体調を崩す彼女に労りの言葉をかけながら、
ちゃんと勉強してるのか?と小さな説教もする。
静香は淳の言葉には返事をせず、雑誌で淳の恋愛運を見ていたんだと言った。
「よーく聞いててね?新しい縁はもしかすると、すぐに近くにいるかもしれませーん!
その上あなたはその相手に多くの影響を与えるでしょう!」
これは私と淳のことだと思うのよね!と静香は続けたが淳は、
そういった話は聞き飽きた、俺はお前のことは幼馴染以上には考えられない、
と鋭く諌めた。
おまけにもう一度小さな説教をするものだから、静香はブーたれた。
すると、
「おっ!」
という声が聞こえたのでそちらを見ると、タバコを拾う一人の女が居た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/42/ad6f244b18bdaa4d41090074ec0d0f9e.jpg)
確かさっきサンチュ焼酎を飲んで、馬鹿騒ぎをしていた女だ。
「さっきからなんなんだあいつ‥」
淳がひとりごちたので、静香が不思議そうにした。
「このままオールするの?」
「いや、もうそろそろ終わりそうかな」
「復学した子は結構いるの?」
「もちろん、俺の他にも何人かいるよ。そんなもんだろ」
ノイズが障る、先ほどの宴会が思い出された。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/ee/fe4c7b974ffba9f92959fc6b34378809.jpg)
馬鹿騒ぎする女、
空気の読めない新入生、
金目当てで寄ってくる同期、
恥ずかしげもなく羞恥な姿を晒す後輩
「まぁ、ちょっと汚らわしいけどな」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/45/29186955c83d085f07d39e556ec9f59b.jpg)
寒くなってきたから切るぞ、と言って淳は飲み会に戻る。
おそらく死屍累々なその現場を想像して、少しため息を突きながら。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/55/ac05903392456f1ed95c37cbf549397e.jpg)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これが青田先輩の物語の始まりです。
雪と同じ場面ではありながら、見ているものや感じているものは全然違う。
私ら読者でさえ、どちらかの視点で語られた物語をそれが全てだと信じ、
視点の主に共感することで人や物事の印象を自然と決めている。
それが顕著になった話ではなかったでしょうか。
二人の物語の始まりは、互いの印象は、けして良いものではありませんでした。
続いて始まる新学期に、二人の運命が翻弄されていきます。
彼の物語もここから始まります。
青田淳 休学明け三年生
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/d1/40188bc0bdaad05f1bb260537d4b0257.jpg)
復学して初めて大学に出てきた彼は、廊下で一番親しい友人である柳に出会い、久しぶりだなと声をかけられる。
「今夜の飲み会来るんだろ?」
と言われ、
「もちろん」
と笑って答える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/82/09ed64b6881841822bbbfd41278d0be3.jpg)
遅れて到着した彼を、かつてのメンバー、新しい学生達が一斉に迎えた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/d8/e2cb3ed757740829e6ab07bbf23219da.jpg)
「久しぶりだな!元気だった?」
「髪伸びたなぁ、オレのこと覚えてるか?」
「青田先輩こんばんは!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/e1/5212a00c06c06e02a7f21c05aba81740.jpg)
彼の周りにはあっという間に人だかりが出来、彼はそれに笑顔を向ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/36/8474c84e9b06625ec527e57bf126b8be.jpg)
口にした言葉はたった一言だけ、「ああ」と言うだけだったけれど。
休学前からお世話になっていた健太先輩は淳の復学を喜び、もう一人の復学生を紹介しようと声をかけた。
遠くでぼんやりとした女学生が、よろしくお願いしますと言った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/27/92306109c8c4257b8a0adabff5872612.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/4e/d79bcdfe437de53a66c713b5f977fc27.jpg)
淳もよろしくと挨拶し、すぐにまた健太先輩との話に戻った。
共通の先輩の話、学生連合の会合の話、男子学生だけの飲み会の話、
健太先輩と、前に座る柳との会話は、二年ぶりのせいか色々尽きることはない。
積もる話は沢山あったが、新入生の女の子達が隣りに座ってきたせいで、ちっとも話は進まなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9e/57257b645e96997cc3f8b12078ca9675.jpg)
挙句、無遠慮にも新入生は自分に密着する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/57/c8a81717c7ad23130a167c1d323ca9a7.jpg)
ドンガラガッシャーン!
グラスは倒れ、新入生のスカートは水でびしょ濡れになった。
女学生は席を外し、騒然となったこの場も自分が片付けることでうまく治まる。
淳は手を拭いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/e5/f35507d12019ec5f61cb8ce6f26c8c51.jpg)
飲み会は続く。
ガヤガヤと人々は会話を続ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/23/87d5e745c8679db5199da670612ae68d.jpg)
そんな中、遠くの席がにわかに騒がしくなった。
先ほどの復学生が面白いことをやると言う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/bc/ffeb98103a444cab032bdb11cbd18763.jpg)
その子はサンチュに入った焼酎を飲み干し、口からは酒が滴った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/61/cdbb9d1bbe46a88730b75603bb77ce06.jpg)
知らず知らずの内に、顔をしかめていたかもしれない。
「あいつ結構面白いだろ?」という健太先輩の会話には応えず、また他の話題で話は続いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/fa/c4de19f000982427e1402502d3d778ca.jpg)
先輩、こんばんは!私達のこと覚えてますか?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/4b/45e647517d276442371eb1a17db0ac0a.jpg)
キャハハハ、飲むぞー! ちょ、トイレ‥マジ吐きそう
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/ca/6959c4a364e902fcb6acd92377ee0ce1.jpg)
金集めとく? 青田が出してくれんじゃね?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/8c/58e97539715212fc11b177c3bdd6fc5a.jpg)
目は閉じることが出来ても、耳は閉じられないのは生物の進化か、人類の退化か。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/f1/d2c4108b02c201eeff579c4ae6b89c38.jpg)
飲み会は続く。
ノイズを撒き散らしながら。
そんな自分を見て、柳が「眠そうだな」と笑った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/2d/6464167736b8412e2e81e38229c53dd3.jpg)
「大学に戻った感想は?」
と聞かれ、
「何も変わってないのな」
と答える。
その時ポケットの携帯電話が震え、ちょっと電話してくると席を立った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/a9/b22067531dd13093fda099caa680e34a.jpg)
電話の主は、幼馴染みの河村静香だった。
いつも不注意で体調を崩す彼女に労りの言葉をかけながら、
ちゃんと勉強してるのか?と小さな説教もする。
静香は淳の言葉には返事をせず、雑誌で淳の恋愛運を見ていたんだと言った。
「よーく聞いててね?新しい縁はもしかすると、すぐに近くにいるかもしれませーん!
その上あなたはその相手に多くの影響を与えるでしょう!」
これは私と淳のことだと思うのよね!と静香は続けたが淳は、
そういった話は聞き飽きた、俺はお前のことは幼馴染以上には考えられない、
と鋭く諌めた。
おまけにもう一度小さな説教をするものだから、静香はブーたれた。
すると、
「おっ!」
という声が聞こえたのでそちらを見ると、タバコを拾う一人の女が居た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/42/ad6f244b18bdaa4d41090074ec0d0f9e.jpg)
確かさっきサンチュ焼酎を飲んで、馬鹿騒ぎをしていた女だ。
「さっきからなんなんだあいつ‥」
淳がひとりごちたので、静香が不思議そうにした。
「このままオールするの?」
「いや、もうそろそろ終わりそうかな」
「復学した子は結構いるの?」
「もちろん、俺の他にも何人かいるよ。そんなもんだろ」
ノイズが障る、先ほどの宴会が思い出された。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/ee/fe4c7b974ffba9f92959fc6b34378809.jpg)
馬鹿騒ぎする女、
空気の読めない新入生、
金目当てで寄ってくる同期、
恥ずかしげもなく羞恥な姿を晒す後輩
「まぁ、ちょっと汚らわしいけどな」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/45/29186955c83d085f07d39e556ec9f59b.jpg)
寒くなってきたから切るぞ、と言って淳は飲み会に戻る。
おそらく死屍累々なその現場を想像して、少しため息を突きながら。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/55/ac05903392456f1ed95c37cbf549397e.jpg)
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これが青田先輩の物語の始まりです。
雪と同じ場面ではありながら、見ているものや感じているものは全然違う。
私ら読者でさえ、どちらかの視点で語られた物語をそれが全てだと信じ、
視点の主に共感することで人や物事の印象を自然と決めている。
それが顕著になった話ではなかったでしょうか。
二人の物語の始まりは、互いの印象は、けして良いものではありませんでした。
続いて始まる新学期に、二人の運命が翻弄されていきます。
なるほど先輩も軍役中は短髪だったのですね‥!
坊主に近い感じでしょうか‥想像出来るような出来ないような‥。