
あの自主ゼミから少し経ったある日、雪は頭を抱えていた。

授業中寝てしまったせいで、ノートに書かれた字はミミズ状態で判別不可能。
記憶が薄れる前に要点だけをまとめてしまおうと、授業が終わった後ノート整理をしていた時だった。

突然プリントを差し出された。
視線を上げると、目の前に平井和美が立っていた。
「寝てたの?このプリント見ながら課題するのよ。どうぞ」

プリントを受け取り、やることがまた増えた‥とゲッソリしていると、
見下ろしながらこう言った。
「あんた、知ってたんでしょ」

「え?」

「だから自分だけ抜けてあっち行ったんでしょ?さぞ楽しかったでしょうね」
そう言われて、ようやく思い出す。

あ‥あのクソゼミのことか‥。
あれはマジで誤解だから‥と両手を上げて弁解すると、どこから来たのか横山翔が隣に座ってきた。
やめとけばいいのに、挑発するような不敵さで話し始める。
「だ~から後悔する前にこっち来いって言っただろ?」

「お前が一方的に青田先輩に頼んだみたいだけど、
先輩はハナからお前んとこに行く気なんてなかったみたいだぜ。だっせぇ」

空気が冷えきり、その後二人は言い合いを始める。
実は横山は、以前は和美に言い寄っていて、それに対して和美はあるポスターを大学の掲示板に張り出した。
<精神的かつ時間的な被害を及ぼし、友人との信頼関係を壊そうとした横山翔さんの行為を告発します。
このポスターは横山さんが謝罪をするまで剥がすつもりはありません>

横山と和美はこれを機に犬猿の仲になった。
そして今もそれは続く。

二人は声を張り上げて言い争う。
聡美とあんたがうまくいくわけないとなじる和美に、調子のんじゃねぇと怒鳴る横山。
雪は折を見てその場から逃げ出した。

その後廊下まで横山が追いかけてきて、聡美と上手くいくようにとりはからい、
和美に恥をかかせる手伝いをしてくれと言ってきた。
その代わり青田先輩とうまくいくよう手伝うからと。
暴走し気味の横山に最初は意見していたが、途中から呆れ返り、最後は無視してやり過ごした。
翌日、聡美に昨日あったことを報告していた時だった。

彼女はあることに気がつく。
「あれ?雪の持ってるプリント、課題のタイトル違くない?」

どういうこと?と問う雪に聡美は、
元々出た課題に追加項目が出て、タイトルごと課題内容がそっくり変わったというのだ。
どうやら雪が寝ていた時にされた変更らしく、聡美の持っているプリントは雪には見覚えのないものだった。

このプリントを持ってきたのは‥

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<雪>災難の始まり(2)へ続きます。
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