Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

スパイ大作戦

2016-12-20 01:00:00 | 雪3年4部(突撃〜時の流れ)


笑顔が胡散臭い男とメガネの受付嬢は、相変わらずそこから動かなかった。

まるで門番の様に、雪と淳を監視する。

「あの」



そして遂に淳は、男に近付いて声を掛けた。

「お手洗いはどこですか?」



男は笑顔で対応する。

「あ、こちらです〜。一階にありますが、

廊下突き当りは工事中で通れませんのでね〜」


「はい。ありがとうございます」






淳が礼を言って軽く会釈をすると、男と受付嬢は笑顔で彼を見送った。

淳は案内された方向へと踏み出しながら、チラと周りに視線を走らせる。



あのドアには鍵が掛かってる。

あそこは外部から人が入ってくる可能性があるから、疑われない為にも最後まで閉められないはず




さっき外から見た時、建物の奥側にも廊下や階段に付けるような窓が見えた



どのドアが開いているか閉まっているか、そしてどこに通路が隠れているかー‥。

淳はこの建物の造りを頭に叩き込みながら、ゆっくりと廊下を歩いた。

後ろを振り返ると、案の定受付の男は付いて来ている。

やっぱりな



淳は今スパイさながらに、隠された通路を見つけ出して蓮の居場所を突き止めようとしていた。

しかし男に監視され付けられている今のままでは身動きが取れない。

そこで雪の出番である。

「あの!」



「このパンフレットなんですけど、

読んでみたらそんな変な内容でもなかったので‥」




「一度詳しい説明を聞いてみたいんですが‥」「おっ!」



その雪の言葉に男が食い付いた。

男は淳を付けるのを止め、雪に向かって詳しい説明をし始める。

「どうせ弟を待ってなきゃいけないのでその間‥」

「はい、それは良いご決断ですね〜!やっぱり高給なのが魅力ですよねぇ?

ピラミッド商法と言っても悪いものばかりじゃありませんから〜もしそうならとっくに消えてますよぉ」




途中受付嬢が淳の方をチラリと見たが、淳がニッコリと笑顔を浮かべると顔を赤らめて微笑んだだけだった。

雪が二人の気を逸している間に、目当ての通路を見つけ出す。

あれだ



椅子でブロックされた僅かな隙間から、上へと続く階段が見えた。

淳はすばやい動作でそちらに近付くと、その中へと入って行く。



ここは二階。雪を一人にしてるから早く‥



そう思いながら階段を上り始めた時だった。

「うっ‥」



視線の先に、見覚えのある男の姿が見えた。

男は片手で相手を締め上げ、階段には低い呻き声が響いている。

「うううっ‥!」







不意に現れた河村亮の姿を目にして、淳は思わず目を丸くした。

亮は階下から視線を感じ、険しい目つきでそちらを見る。



「‥‥‥‥」「おいっ‥!ううっ‥!」



男の呻き声が響くその空間で、数秒間淳と亮は視線を合わせていた。

自分が行く道の先に現れた亮のことを、淳は疎ましさを含んだ目つきで見る。



数秒の後、二人は会話を交わし始めた。

「ま、そーだよな。お前も来るだろうとは思ってたぜ」「何をやってる?」

「何もしてねーって。正当防衛だ正当防衛」



「三階に居たんじゃなかったのか?蓮君は?」

「いやアイツとは別々の部屋にされたんだよ。便所行くっつってアイツが居るはずの部屋見たけど

居なくてよ」




「んで下の階降りようとしたらコイツがずっとついてくっから‥でも今三階には誰もいな‥」

「何してるんですか?!」



「あ、下りて来ちまった」



そこでスパイ大作戦は頓挫した。

二人+雪はまとめて連れられて、一つのソファに座らされる。

ドドン!



三人を目の前にして遂に、笑顔の胡散臭い男の仮面が剥がれた。

亮に締め上げられたガタイの良い男も青筋を立てて三人を睨んでいる。

「困りますねぇこんなことされちゃあ〜〜〜。一歩間違えば暴行罪ですよ?暴行罪!」



「暴行罪ィ?」



やにわになすりつけられた”暴行罪”に、その道に長けた(?)亮が食って掛かった。

「暴行罪ってのがどういうモンかそちらさん分かって言ってんの?!

そこのでっかいのが先にオレの腕引っ張って痛かったんスけどぉ?!」
「うっ



雪はその間淳に蓮の所在を聞いたが、淳の答えはNOだった。

雪がいよいよ男達に向かって声を上げる。

「あのねぇ」



「それじゃ一体私の弟は‥」

「あー!腕折れたかもしんねぇ!あー!」「冗談も大概にして下さいよ?!」

「いやだから弟は‥」「冗談だと思うなら警察呼んで白黒つけましょうか?」



雪が男達を問い質そうとすると、彼女を庇う為に二人は口を開く。

「そーだそーだ!そーなったら困るのはどっちかねぇ?!」「弟はどこに‥」

「どうもおかしな会社のようですね。

受かっても行かせるつもりはありませんので、すぐに弟を呼んできていただけませんか」




「おとうと‥」



雪の前には二人のスパイが、いや二人のボディガードが睨みを利かせて鎮座していた。

ガッチリと彼女を守る体勢で。



「‥‥‥」



男は表情を引き攣らせながら、それでもなんとか笑顔を作って口を開く。

「ははは!そんなに興奮しないで下さいよぉ〜。

それじゃそちらの方は面接辞退されるんですね?さっきからずっとタメ口‥
「おう」



「もうすぐ本当に面接終わりますから、おとなしく待ってて下さいねぇ?」

「ホントだな?」「本当ですってば!」



男達はそう言って部屋を出て行った。

去り際にギロリと雪を睨んで‥。



「扉は開いてますから!」

今傷ついた目で私の事見てた‥



そして雪達は暫しその場に残された。

しんとした静寂が、三人のスパイを包み込む‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<スパイ大作戦>でした。

さて今回‥なんだかこのコマが胸熱!



昔のこの雪ちゃんを思い出して胸熱!



自分を守ってくれる人なんて誰も居ない、とかつて思ってた雪ちゃんが、

努力して向き合って作ってきたからこその関係ですよね。

腕力の亮と頭脳の淳と‥心強すぎる味方だわ‥。


でもやっぱり肩幅が気になる‥!



ま、いっか‥


次回は<心地良い狭間>です。


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突撃

2016-12-18 01:00:00 | 雪3年4部(突撃〜時の流れ)


話題のSGビル前に、一台の高級車が停まっていた。

小西恵はその中で、心配そうに携帯電話を握り締めている。蓮からの連絡は、まだ無い。







雪と淳は今その建物の中に居た。

雪は鋭い目を光らせ、淳は目を丸くしながら、二人並んで座っている。



二人は今、ヤングマン産業受付の笑顔が胡散臭い男と向かい合っているのだった。

「あぁ、弟さんですね〜?一度申請書を調べてみますので〜」



「現在面接しておりますので三階にいらっしゃいますねぇ。

岸本さん、申請書を持って来てくれます?」
「はい」



雪は「三階」と聞いて鋭い目をますます光らせた。

胡散臭い男は依然ニコニコと笑顔を浮かべながら、二人に向かって口を開く。

「お茶はいかがですかぁ?鞄お預かりしましょうかぁ?」

「いえ、結構です」



男からの申し出に、淳は柔和な笑顔でやんわりと拒否した。

その笑顔を見て、男はずずいと身を乗り出す。

「お兄さん本当に男前でいらっしゃいますね!当社に来て頂けたら絶対ピッタリ‥あはは!」



雪は男に向かって、気になったことを単刀直入に切り出した。

「あの、あちら側のドアには鍵がかかっていましたが、

中に人が居る場合でもそうするんですか?」
「あ〜はい〜。使わないドアですから〜」



男は笑顔を崩さぬまま、若干の皮肉も混ぜて雪の敵意をはぐらかそうとしていた。

一方淳は険しい表情の雪を見て、建物の構造やその内情を密かにチェックする。

「お姉さんは本当に心配性ですね〜面接が終わり次第すぐに降りて来られますのでご心配なく〜

こんな風にご家族様がいらっしゃるのは珍しいですよぉ。弟さん、とっても愛されてらっしゃいますね〜」




「では少々お待ち下さい〜ドアは開けてますので〜」



男はそう言って手を振りながら出て行った。

廊下に響く笑い声がだんだんと遠くなる。



淳は言葉を選びながら、自身の気持ちを口にした。

「立地もそうだけど、こんな時間まで面接とか‥ここってやっぱり‥」



隣では雪がブチ切れ三秒前だ。

「蓮の奴‥ぶっ飛ばす‥」



すると再び受付の男が二人の前に顔を出した。

「あ、それとですね〜」



「お待ち頂いてる間、一度これに目を通されてはいかがですかぁ?

お二人共まだお若いですし、こういう経験も大事ですよぉ」




中央にピラミッドの形をしたグラフが書かれたそのパンフレットを、

同じ頃蓮もまた嫌というほど見せつけられていた。

「どうです?これを全て売ればすぐに課長になれて、

出来高報酬ももらえます。悪い話じゃないでしょう?」




「嫌ですってば!だってこれ全部自分のお金で買わなきゃいけないんでしょ?!」

「いえいえ、必ずしもそうとは限りませんよ」



二人はもう何回もこのやり取りを繰り返していた。

何度首を横に振っても、中年男はまた最初から説明してくるのだ。

「テレビの見すぎでは?頭が固い固い!ヒョロヒョロのくせに‥」

「はぁ?!今なんつった?!」



「では一回りして来る間にもう一度よく考えてみて下さいね。

時間はたっぷりありますので、沢山悩んでもらって結構ですよ」


「嫌だって言ってるでしょ?!」



「もう夜じゃんかぁぁ!」



すでに日はとっぷりと暮れていたが、蓮がここから出してもらえる見込みはまるでなかった。

それは彼の姉が迎えに来たという事実も、その結論に何ら変化を与えない‥。



パンフレットに目を通し終わった雪は、おどろおどろしいオーラを纏っていた。

どう考えてもピラミッド商法だ。こんなものに手を出すなんてとんでもない。

雪は目の前の胡散臭い男に向かって結論を急ぐ。

「結構です。もう弟を連れて帰ります」「そうなんですね〜」



「えっと〜」



「それでは面接が終わるまでお待ち下さいね〜」



男はそう言って再び部屋を出て行った。

雪と淳は黙って男が出て行ったその方向をじっと見つめる。



「お待ち頂いてる間に、ぜひパンフレットをご覧ください〜」



結構ですと拒否したのに、男は再びそのパンフレットを勧めてきた。

その糠に釘の対応を目の当たりにして、二人は顔を見合わせる。



ひょいっ



雪と淳は身体を乗り出し、先程出て行った男が立っている場所を覗いてみた。

メガネの受付嬢と共にそこにじっと立っている。



何から何まで胡散臭い。

雪はその場からじっと男を睨んでみた。



コソコソと先輩に向かって口を開く。

「ずーっとあそこに立ってますよね。こっち見てるの隠そうともせず‥

「あそこの受付の人も、さっきあの男の人が何か持って来るよう指示したはずなのに、

探しに行ってもないんだよ」




じっと男を見つめる二人を見て、男はまたしてもパンフレットを掲げて見せた。

「ナイから



雪のイライラはもう限界に達しようとしていた。

何度蓮の居場所を聞いてもはぐらかされ、もうかれこれ長い時間待たされている。

「ああもう、本当にどうすればいいんだろ?!

警察に通報しようにも証拠がないし‥」








”証拠”という単語を口に出した途端、一つの案が思いついた。

雪は先輩の耳に手を当てると、コソコソとそのアイデアを彼に伝えてみる‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<突撃>でした。

いやー変な会社ですね‥。もう健太ここに就職すればええんちゃうか(投げやり)

蓮を迎えに来た雪も淳もコートも脱がず待っているところに二人の警戒心が見て取れますね。

恵を車の中で待たせているのも雪の親心を感じる‥。


次回は<スパイ大作戦>です。

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露呈

2016-12-16 01:00:00 | 雪3年4部(鏡〜露呈)
ふーっ‥



なんとか静香と会っていたことを隠し通せた安堵から、雪は深く息を吐いた。

隣には笑顔の彼がいる。

「試験は上手く行った?」

「あ、はい!ちょっと難しかったですけど、勉強した所全部出ましたから」



「頑張ったね」「へへ」



二人は夕焼けの空の下を並んで歩いた。先輩が大学に来るのは一週間ぶりだ。

「俺も試験受けなきゃいけない科目があって、近い内‥」



話す彼の横顔を見つめながら、雪の脳裏にふと健太の言葉が浮かんで来た。

「なんだよー俺とお前の仲じゃねーか!

その‥赤山から青田に上手く話してくんね〜かな〜なんて‥」


「はい?何の話ですか?」



あの時感じた微かな違和感が、雪の心に引っ掛かったままになっていた。

そして淳も同じく、心の中に引っ掛かりを感じている。



「あの‥雪ちゃん、もしかして‥」「先輩」



二人は同時に口を開いた。そして互いに先を譲る。

「あ、先に言って」「いえお先にどうぞ」



「何だよ〜」



そんなやり取りに二人が顔を見合わせて笑っていると、雪の携帯電話が鳴り出した。

「雪ねぇ!」「恵?」

「雪ねぇ今どこ?電話出れなかった?」「あー、試験でしばらく電源切ってたや。どうしたの?」



「え?」



その後恵が話し出した内容を聞くやいなや、雪の顔色が変わった。

そしてすぐさま雪は恵と会うことにしたのだった。



恵の携帯電話に表示されているのは、数時間前の蓮と恵とのやり取りだ。

「今日面接だって?」「うん!今向かってるとこ!」

「蓮、やっぱりどう考えても行かない方がいいと思う」

「確かにちょっと怪しい気もするけどさ、そうだったら出てけばいい話だから。

ったくキンカンは心配性だなー」


「でも‥」「到着!終わったら連絡する!」

「面接終わった?」1



その画面を見せながら、心配そうな表情をした恵が言った。

「ここから既読にならないし連絡もなくて‥」



思わず白目になる雪と目を丸くする淳。

恵はそんな二人に、自身が知っている限りの蓮情報を伝える。

「ここに入って四時間も経ってるのに‥面接がそんな長いなんておかしくない?

名前も聞いたことない会社だったし、何かあったんじゃないかって‥」




「電話は?かけた?」「うん、でも出なくて‥」



下を向く恵を見ながら、雪の背筋がゾワゾワとざわめき出した。

ざわ‥ざわ‥ざわ‥なんだこの嫌な予感はっ‥



あの賭博師ばりにざわざわする雪を見て、口元を引き攣らせる淳。

雪は溜息を一つ吐いた後、自身の携帯を取り出した。

「それじゃ私が一回掛けてみる‥ん?」



そして雪は、新着メールが届いているのに気がついたのだった。

「メールが‥」「なんて?」「あ‥」



「河村氏から‥」

おいダメージ。蓮の奴今日ここに行くぞ



添付された<地図>には、「Young Man産業 SGビル」と記載されていた。

亮が残したその足跡を見つめて、三人は目を丸くする‥。









その頃YG産業に居る蓮は、渡されたプリントを持ちながら一人悶々と立ち尽くしていた。

同室には同じく落ち着かないらしい応募者の姿がある。



蓮は先程の光景を思い出してゲンナリしていた。



「つーかどーしてチーム分けすんの?!亮さーーん!!」

「あなた方はこちらへどうぞ〜」



先程三階の廊下にて、頼りにしていた亮と離されてしまった蓮。

ピンチなのは明らかだったが、蓮はどうしてもまだそれを認められずにいた。

ピラミッド商法‥俺がピラミッド商法‥この俺が自らそんなモンに飛び込むなんて‥



‥こうなったら逃げ出すしか道は無い。

蓮の鷹の目が鋭く光る。



しかしドアには鍵がかかっていた。



あの鍵を開けるにはどうすればいいか。

蓮は周りを窺った後、さり気なさを演出するため鼻歌を歌いながらそこに近付く。



しかし。

「あ」



「もうすぐ面接が始まりますので、ご着席お願いしますね」



脱出失敗‥。

「ハイ‥」



しかしここで諦めたらまたふりだしだ。蓮は中年男に向かって声を上げる。

「あ、あの!やっぱ面接は止めて帰りたいんですけど!」

「え?どうしてですか?」「その‥今家から連絡が来てすぐに帰らないと‥」



それは蓮が咄嗟に思いついた嘘だった。中年男はそれを見破ってこう言い返す。

「はい?!鞄は倉庫の中なのにどうやって連絡なんて‥」



「倉庫?」「あっ‥」



しまった、と中年男は慌てて口を噤んだ。

そして再び笑顔を浮かべながら、隣の大柄の男と共に強引に蓮を室内へと促す。

「ほらほら、緊張のしすぎですよ。そんな嘘ついて〜

そんな難しい面接じゃないですから、まずは緊張をほぐしましょう!」




「就職のドアは開かれていますよ。我々と一緒に働けば‥」



中年男は耳あたりの良いことを言っているが、手には力が込められ、

蓮はズルズルと半ば引っ張られるように中へと戻された。

脳裏に心配そうな顔をして忠告してくれた恵の姿が浮かぶ。

「蓮、もう一度考え直してみない?ちょっとおかしいと思うの」



看過して来た真実が、自分の間違いを認めたくない弱さが、次々と露呈する。

それは蓮の瞳から大粒の涙となって流れ落ちた。

「め‥めぐみぃ‥」



「うわあああああー!」









一方ここは亮が連れて来られた部屋。

亮は配られたプリントになんとなく目を通すも、その内容についてはサッパリだった。

何が書いてあんだ?こりゃ






チラ、とドアの方を窺って見ると、そこにはまるで門番のようにガタイの良い男がずっと立っている。

「はい、それじゃあ皆さん一人ずつ詳しい説明を聞いてみましょうか」



亮の視線に気付いたガタイの良い男がそれを追うと、

もう既に亮は彼から視線を逸していた。



男は亮の横顔から目を逸し、再び前を向く。



‥と見せかけてもう一度亮の方を見た。

「!」



男と視線が合ってしまった亮は、その警戒を解く為にニッコリと笑顔を浮かべる。



だんだんとこの会社の本質が露呈する。

亮はその鍵穴を開けるチャンスを窺いながら、じっと息を潜めていた‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<露呈>でした。

あの賭博師ばりにザワザワする雪‥。

 

蓮がエスポワールに乗ることになったらどうしよう!‥と慌てないのは、

亮さんがついててくれるからこそですね。


さて次回は<突撃>です。


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爪痕

2016-12-14 01:00:00 | 雪3年4部(鏡〜露呈)
学食にて、雪と静香は共に昼食を取っていた。

「見せて下さい」



「‥‥‥‥」



そう言って手を出す雪に、静香は顔を顰めながらも問題集を差し出した。

「何よ食事時にまで‥」「私も試験があるんで。早く終わらせましょ



「つーか学食クソまず」「お金あるなら他行ったらどうです?」



愚痴る静香に苛つきつつも、雪は律儀に彼女の宿題をチェックする。

「全問正解。別段直す必要もありませんね」



「佐藤先輩が全部教えてくれたんですか?」

「ちょっと!全部自分で解いたのよ自分で!

やってもらったんじゃないっつーの!」
「ギャッご飯飛んだ」



飛び散ったご飯粒を払いつつ、雪はその課題に隈なく目を通した。

途中の式も解答もそれなりに出来ている。



「なんとなく理解はしてます?」

「ぜんぜん」「‥‥‥」



静香は溜息を吐きながら、相変わらずグチグチと愚痴を零した。

「ていうかさぁこんなことさせるアンタも会長も‥」

あ、髪の毛にご飯粒ついてる



「なんて無駄なことをー‥」



静香の髪についたそれにそっと手を伸ばした、その時だった。

ガッ!







目にも留まらぬ早さで、突然静香は伸ばされた雪のその手を掴んだ。

瞳孔の絞られた瞳の中に、得体の知れない感情が凍る。






一方雪は突然のことに目を見開いて固まっていた。こんな静香の姿を目にするのは初めてだった。

バッ



我に返った静香は掴んでいた手を突然離し、きまり悪そうに口を開いた。

「もぉ止めてよ。誰に向かってこんなことしてると思ってんの?」



静香自身も戸惑っているのが見て取れる。

「‥‥‥」







雪の手首には、掴まれた時の指の跡がうっすらと残っていた。

まるでそれは何かの爪痕のように、雪の心に何かを残す‥。



不意に鞄の中で着信音が鳴った。

見てみるとそこには”先輩”と表示されている。

「!!」



雪はヒッと息を飲むと、すぐにその電話を取った。

「先輩?!」「今どこ?大学来てるんだけど」

「えっ?!大学?!」「ナッ?!」



突然の淳からの着信。雪も静香も動揺する。

「い、今ですか?!」「はは、毎回ビックリするね」



早く早く、と雪が急かし、静香は真っ青になって荷物をまとめた。

その間にも淳は雪の居場所を持ち前の鋭さで突き止める。

「周りガヤガヤしてるけど、学食?」「え?え?あ‥はい‥!」



しまった‥。

「ちょっと!何ハイハイ返事してんのよ!」「つい‥」



「今行くよ。近くに居るから」「は、はい!待ってます〜」



こうしている間にも淳は学食に向かっている。静香は急いで身支度した。

電話を切ってからも、二人はバタバタと痕跡を消すのに大忙しだ。

「食器下げて行って下さい!」「なんで?!」「私一人で食べてたことにするから!」



そして静香がそこを離れたその瞬間、後ろから声が掛かった。

「雪ちゃん!」



「先輩!」



ギリギリセーフ‥。静香は壁に身を隠して肩で息をした。

「食べてからでいいよ」「もう終わりました!」



二人は淳が前を向いているのを確認してから、互いに向かってサインを送った。

”いつも見張っていますよ”と指を指す雪と、”フザケンナ”と中指を立てる静香‥。







そして雪と淳は学食から出て行った。

静香はそんな二人の後ろ姿を、壁の後ろからじっと窺っていた‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<爪痕>でした。

雪が手を伸ばした時、怯えたような静香の目が印象的な回でしたね。

静香の抱えるトラウマに雪ちゃん気付いたでしょうか。。

そしてモコモコダウンコートの先輩。いささかガタイが良すぎるような‥。



ま、いっか‥(←適当)

次回は<露呈>です。


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看過の代償

2016-12-12 01:00:00 | 雪3年4部(鏡〜露呈)


その建物の前に、二人は佇んでいた。

やる気満々の蓮と、連れて来られて乗り気じゃない亮と。



「とにかくガッポリ稼ぐんダーッ!」「ま‥悪かねーけど‥」



「俺らなら出来ーる!」

「まー特に断る理由もねーけどよ。オレ何気にコミュ力高ぇし‥」

「お待ちしておりました」



社内の人間に促され、二人は建物の中へと入って行く。

「ようこそ!」「ハイ!こんにちはーっ」



バタン!



その扉は二人の背後でガチャリと閉められた。

訝しげな視線を送る亮と目を丸くする蓮に、男はニッコリと笑顔を浮かべて相対する。



<実のところ蓮は、この時点で薄々気が付いていたのだが>



急に警戒モードの蓮は、キョロキョロと辺りを見回しながら慎重に足を進めた。

あっちは閉めなかった‥なら問題ないか?

「二階でプレゼンをしますので、よく聞いて面接に臨んで下さいね」「ハイ!」



この扉の向こうには希望と金がたっぷりとあると信じて‥。

金稼ぐぞ!Many Money!



<それを無理やり否定してしまった>







ドドン!



応募者は一つの部屋に集められ、円形に配置されたテーブルに就いて挨拶を交わした。

「こんにちは〜」「はい、こんにちは」「こんにちは〜」



ニコニコと皆に笑顔を振り撒く蓮とは対照的に、亮は無言でただじっと座っている。

じきに担当者らしき中年の男性とガタイの良い男性が二人、室内に入って来た。

「こんにちは〜」「こんにちは」「こんにちは!」



中年男性は柔和な態度で皆に飲み物を聞いて回る。

「何か飲みますか?コーヒー?お茶?」「お茶で!」「オレはいい」



その中年男性の後ろから、ガタイの良い男性が段ボールを持って皆の間を回り始めた。

「鞄をここに。こちらで預からせて頂きます。終わったらお返ししますので」

「あ‥はぁ‥」



箱は蓮と亮の前にも回って来た。しかし亮は首を横に振る。

「カバン持ってねぇ」「あ、それじゃあ携帯電話をお預かりします」

「俺、自分で持ってたいんですけど‥どうして預けなきゃいけないんですか?」



「実はうちのプレゼンが口コミで広まってまして‥

録画してアップする人がいるみたいなんですよ。どうぞご協力お願いします」




男はそう言いながら、箱を二人の前に差し出し続けた。

後ろに立つガタイの良い男の威圧感が物凄い。

「お願いします」



蓮はタジタジしながら「あ‥はい」と言って鞄を手に持った。

しかし亮は‥。



亮は二人を見上げたまま、動こうとしなかった。

そんな亮に笑顔を見せつつ、この二人もまた動こうとしない。



だんだんと亮の目つきが鋭くなって来た。



そしてこの二人の表情も、貼り付けたような笑顔が徐々に引き攣って行く。






そんな二人に、今やあからさまにガンを飛ばす亮。

思わず口元を引き攣らせる中年男と、同じ様にガンを飛ばすガタイの良い男‥。



やがて亮は折れ、携帯をその箱の中に入れた。蓮も鞄を入れる。

「どうぞ‥」「ほれ」「ありがとうございます」






男達は同じ様に箱を持って皆の前を回る。それを見ながら蓮が悔し紛れにこう言った。

「気にしない気にしない!録画なんかしなくてもどーせ流出すんのに!何を大げさな!」



そんな蓮のことを亮はジトッと見ていたが、敢えてその理由については口にしなかった。

「あり?なんでそんな目で見んの?」「別に」







数分後、プレゼンが始まった。

「私どもYM株式会社は、動物と共存可能な「エコ企業」というビジョンを持っており‥

特に弊社が販売致します「香菌剤RBD」は天然成分を配合しておりまして‥」




熱心にノートを取る蓮と、仏頂面で腕を組んだままそれを聞く亮‥。

「書くほどのモンじゃねーだろ」



刻々と時間は過ぎ、いつしか外は夕焼けに染まっていた。

しかし社内に閉じ込められた蓮と亮が、その夕焼けを見ることはない‥。





「あー終わった終わった!」



「思ってたよりプレゼンイケてたじゃん!ほらやっぱりちゃんとした会社だったっしょ?」

「知らねーっつの」「三階の面接会場に移動して下さい」



皆部屋を出て一様に廊下をゾロゾロと歩く。案内するのは先程の中年男だ。

「十分程の休憩時間を挟んで、面接を始めます」「鞄はどこでもらえますか?」

「あ、それは面接が終わってからお返ししますので」



チリ、と嫌な予感がした。

蓮は目を丸くしながらその男の説明を聞く。

「チームごとに部屋を用意しましたので、一旦そこへ移動しましょう」

「はい‥?」「さ、さ、皆さん移動お願いします」







男はそう言ってさっさと歩いて行き、その後ろに居るガタイの良い男がギョロリと蓮のことを睨んだ。

固まる蓮の背中はその大きな手で押され、皆半ば強制的に皆同じ方向へと歩かされている。

「移動お願いします」



「さぁ入って。入って!」



強制的な団体行動、外部との接触不可、そして少人数での部屋移動‥。

模範的な商法の手口である。



蓮が看過していた嫌な予感は、ジワジワと自身の首を締めつつあった。

立ち尽くす蓮に向かって、その胸中の声を代弁するかのように亮が言う。

「ハメられたな」



「これってよぉ、いわいるプライド商‥」



言い間違う亮に向かって、蓮はヤケクソで叫んだ。

「ピラミッド商法!」








突然のその大声に、皆が蓮の方を向く。

「え?」「い、いえ‥」



蓮と中年男は、おかしくもないのに顔を見合わせて笑い合った。

「はは!」「ははは!」「はははは!」



そして蓮はまた目の前の真実に目を背ける。

「いや‥俺がそんなもんに登録するわけねーし‥」



亮は蓮が苦し紛れに紡ぐ言葉に、ただ相槌を打って頷いた。

「そういうのじゃねーって!まだ面接もしてねーし!」

「あぁ、んだな」



亮はわざと歩く速度を緩め、

ゾロゾロと歩く群衆の数メートル後ろに就いた。



フン、と鼻で息を吐く。



亮は頭の中で、先程見た限りで把握出来る人数を反芻していた。

ここには四人‥さっき下には二人‥三階には‥何人だ?



蓮が見ないふりをしているそれからは、危険な匂いがプンプンしていた。

とりあえず今日アイツはヒデー目に合うだろうな



数々の修羅場を潜り抜けてきた亮だからこそ、分かっていた。

これから蓮が、その看過の代償を受けるだろうということも。

つーかダメージ、さっきオレが送ったメール見てねーのか?



携帯が取り上げられるだろうということも、亮は予測していた。

彼がこの建物の中に入る前に掛けた保険は、今雪の携帯の中に潜んでいる‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<看過の代償>でした。

はい、予想通りのマルチ商法でした〜

蓮、読者全員がそうだと思っていたよ‥。亮さんついてきてくれてヨカッタネ‥。

ガン飛ばしまくりの亮さんが良かったですね。ふふふ‥


次回は<爪痕>です。

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