晴れ上がった空のように・・

日常の出来事や読んだ本の紹介

あの日にドライブ

2009年09月11日 | 
あの日にドライブ  荻原 浩 著 光文社

‘97年に「オロロ畑でつかまえて」で小説スバル新人賞を受賞してからヒット作がなかったものの、2005年「明日の記憶」で山本周五郎賞を受賞、映画化で、話題になりました。すっかりミリオンセラー作家さんとなり、幅広い年代層の支持をうけています。

伸郎は43歳。もと大手都市銀行のエリート行員。がっ、たったひとつの失敗から退職。今はタクシードライバーで、なれない仕事に営業成績はあがらず、家族からも冷たく見放されたかんじ。失意のどん底にいるころ、学生時代をすごした街に偶然ととおりかかる。もう一度人生をやり直すことができたら・・

いやはや・・
ユニークでテンポのいい文章にぐいぐいと本の中にひきこまれ、思わず笑ってしまったり、「うまいなぁ~」と、感心したりでした。

夢と希望に満ち溢れていた青春時代を懐かしく思い出し「あのころはよかったなぁ・・あのころにもどれたら~」
と、妄想にふけり、現実逃避する中年男の心理はよく理解できる。
ましてや、エリート銀行員のプライドがあって、「俺はこんなはずじゃない」と、思うんでしょうね。
銀行員の悲惨な勤務状況、人間関係は、リアル。荻原さんって、モト銀行員だったの??それとも、タクシー運転手??
それにしてもちょっと、ひどい。銀行の人がみたら気分悪くするかも。

あの時、恋人と別れずに結婚していれば・・とか、希望の職についていれば、今頃は~なんて、誰しもいちどは夢想します。

くら~い、悲観的な、人生の落伍者のような主人公で終わるのかなぁ・・と心配しながら、読み進むうち、ちゃんと、明るい結末が用意されてました。

そう・・
結局は、「あの日にドライブ」は
自分探し、幸せ探しの「明日へのドライブ」・・ってことだったんですね。

なかなか、奥深い~小説でした。読後感もさわやかです。
しかしながら・・
タクシー業界も大変なんですね。運転手さんの苦労がよくわかりましたよ