不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Pittore Miniatore Beato Angelico

2007-12-04 07:15:08 | アート・文化

1400年代初頭から活躍したフィレンツェ派の画家。
本名はグイド・ディ・ピエトロ・トロジーニ
(Guido di Pietro Trosini)で
フィレンツェ郊外ヴィッキオ(Vicchio)生まれ。

ロレンツォ・モナコ(Lorenzo Monaco)に師事し
彼からゴシック絵画の基礎と、
自然とはかけ離れた鮮烈な色遣いや
影をも飛ばすような強烈な光の遣い方を習得。
その後は初期ルネッサンスの基盤を築いた
マザッチョ(Masaccio)の作品から
空間および人体の三次元的な描写を学んでいます。

1418年からフィエゾレ(Fiesole)の
サン・ドメニコ修道院に入ったため、
当初はジョヴァンニ・ダ・フィエゾレ
(Giovanni da Fiesole)などとも呼ばれており
ベアト・アンジェリコという呼び名は
後世になって付けられたもの。

「アンジェリコ:天使のような」という呼び名は画家本人の死後、
ヴァザーリが列伝の中で記しています。
因みにベアト(Beato)というのは
列福された人物に与えられる称号で、
カトリック教会では聖人に次ぐ位。
基本的には奇跡を起こした人や
社会に貢献した宗教者に与えられる称号で
人格者としても名高い宗教者であった
フラ・アンジェリコにももちろん与えられています。
ただしフラ・アンジェリコの実際の列福は
実は最近のことで1984年。

1440年にはコジモ・デ・メディチ(Cosimo de' Medici)の命で
フィレンツェのサン・マルコ修道院の僧坊のフレスコ画を手がけ
また1445年以降はローマに移り
教皇エウジェニオ4世やニッコロ5世などに仕え
ローマでフレスコ画を描いたり、
また数々の板絵などを残していますが
いずれも非常にゴシック様式の強い独自の画風で
鮮明な色をちりばめて、
非常に敬虔な人物を描く宗教画となっています。

このいわゆる「高潔で敬虔な」人物像と
独特な色使いが苦手で
私は個人的にはあまり彼の作品は
好きではないのですが
絵画としての美しさには脱帽します。

こうした大き目の作品を残す傍ら
修道院内で写本の挿し絵などを描くことを
日常的な作業としていた画僧で
いわゆるミニアチュール・写本装飾画も多く、
そのほとんどはサン・マルコ美術館
およびサン・マルコ教会に保存されています。
そのなかからフィエゾレのサン・ドメニコ修道院のために
作成したグラデュアル応答歌(Graduale miniato)をはじめ
ベアト・アンジェリコが手がけた
約20点の装飾写本を集めた展覧会が開催されます。

若い頃から友人であり同僚であった
バッティスタ・ディ・ビアジョ・サングイニ
(Battista di Biagio Sanguigni)と共に開発されたといわれる
ミニアチュール装飾の技術は、
後の板絵やフレスコ画の実現にも
多いに影響を与えているといわれています。
特にラピスラズリの青や金箔などの
貴重な顔料の扱いが上手だったのは
こうした数々の小さな作品の中で
実践を積んでいたからだともいわれています。

普段はなかなか目を留めることのない写本ですが
初期ルネッサンスの画家の原点を探る意味でも
この機会にじっくり鑑賞したい展覧会。

ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ
(Santa Maria Sopra Minerva)の修道院で
1455年に亡くなった画家の没後550年を記念して
地道に行われているイベントの一環です。
没後550年から既に2年経っているのに
まだ関連イベントが続いているのにも驚きです(爆)。

Fra Giovanni Angelico
Pittore miniatore o miniatore pittore ?
会場:サン・マルコ美術館(Museo di San Marco)フィレンツェ
会期:2007年12月20日から2008年3月29日まで
開館時間:月曜日から金曜日 8:15-13:50
     土曜日 8:15-18:50
     日曜祝日 8:15-19:00
休館日:第1,3,5日曜日、第2,4月曜日、12月25日、1月1日
入場料:4,00ユーロ