不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il restauro del mai restaurato

2008-04-01 08:40:41 | アート・文化

Incoronazione_vergine

ジョルジョ・ヴァザーリ(Giorgio Vasari)によって
1567年から1570年にかけて作成された一枚の油絵。
4メートル×5メートルのこの作品は
ヴァザーリの最後の加筆の後一切加筆されず
修復もされないまま現在に至っています。

フィレンツェのフィリッポ・サルヴィ(Filippo Salvi)の
依頼で制作された作品は
「聖母戴冠(L'incoronazione della Vergine)」で
当初プラートのサン・ヴィンチェンツォ修道院に
保管されていましたが
まもなく200スクードで売買され
アレッツォの法学者ネロッツォ・アルベルゴッティ
(Nerozzo Albergotti)の手に渡り、
アレッツォのピエーヴェ・ディ・サンタ・マリア
(Pieve di Santa Maria)にある
アルベルゴッティ一族の礼拝堂を飾ります。
このときに現在のような豪華な金の額縁が作成され
両脇に聖人像が追加されました。
1865年までこの礼拝堂を飾っていましたが、
その後ピエーヴェ(教会)の全面的な改修に伴い
バディア・デッレ・サンタ・フローラ・エ・ルチッラ
(Badia delle Santa Flora e Lucilla)の主祭壇裏に移され
そのまま半分忘れ去られた形となっていました。
そのため修復されることもなく
埃をかぶったままの状態になっていました。

2011年のヴァザーリ生誕500周年に向けて
この絵画作品が初めて修復されることになりました。
修復予定期間は約一年といわれています。

前世紀までにほとんどの主要作品は
何らかの形で加筆・修復されているので
こうして一切手を加えられずに
現在まで至っている作品は非常に珍しく
修復にまつわる世界では今回の修復が大きな注目を集めています。
技術的にはなんら難しいことはなく、
むしろ何も手が加えられていないことで
単純な清掃作業が中心となるため、
修復自体はそれほど時間もかからず
約1年で完了すると見られています。
ただし、ここ最近「行き過ぎ」ともいわれるような過剰修復がみられるので
今ケースでもどこまで手を加えるのかが課題とされています。
他の芸術家の手が加わっていないだけに
純粋なヴァザーリの画家としてのテクニックを確認できるというのも
注目されている理由の一つです。

3月28日にはこの修復にあたり
世界各地からの美術研究家や修復士が集まり会議が行われて
「修復されたことのない作品の修復の重要性と課題点」について
話し合いがもたれたばかり。
またVasari visto da vicinoという展覧会が4月13日まで開かれていて
この修復を待つ祭壇画の両脇の聖人像も含め展示されています。

Vasari visto da vicino - Le tavole laterali della pala Albergotti-
展示会場:Museo Medievale di Arezzo
会期:2008年3月28日から2008年4月13日まで
予約・インフォメーション:修復現場の見学可。+39-0575-399788