不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Viniitaly 2008 e Problema di Brunello

2008-04-08 07:26:00 | 日記・エッセイ・コラム

2008年4月3日から4月7日まで
ヴェローナで開催されていたVinitaly(ヴィニタリー)。
2008年で42回目を迎えた
由緒正しいワイン品評会で
生産者や輸出入業者はもちろん
一般のワイン愛好家やジャーナリストも参加するもので
イタリア国内外のワイン業界が注目する
1年に一度の大イベント。

その規模は毎年拡大し続けていて、
特に2008年の外国からの参加者は前年比15%増を記録。
中国をはじめとするアジア地区からの参加や
ロシアをはじめとする東欧諸国からの参加が
増えているのが特徴。
また一時収束したアメリカ市場も
徐々に復活の兆しを見せているようです。
世界に知られるVinitalyはイタリアでの展示を終えると
ロシア、アメリカ、日本、中国、インドとワールドツアーに突入。
そして2009年は4月2日から6日までの開催予定。

もちろんトスカーナからも毎年多くの生産者が参加しています。
特にキアンティ・クラッシコは2004年、2006年、2007年の
最良といわれる近年3年の
ヴィンテージワインを引き下げての参加となり、
その質のよさでトップにたったと言われています。
これだけの質の高いワインを揃えられる州はなかなかなく、
トスカーナ州としても80年代以来の快挙。

そんなワインの宝庫トスカーナ州で
1月から始まっていた調査により、
Vinitaly直前に発覚したブルネッロ偽造事件は
トスカーナだけでなくイタリアのワイン業界に波紋を投じました。
特に摘発された4生産者は
Argiano(アルジャーノ)、Banfi(バンフィ)、
Frescobaldi(フレスコバルディ)、Antinori(アンティノーリ)という
世界に名を知られる会社だけにその衝撃は大きいものでした。

フランスのボルドーワインなどがぶどう品種の指定だけで、
毎年各生産者の好みに合わせて
どのようにでも手が加えられるのに対して
イタリアのワインは成分規定が細かく決められている場合が多く
それが非常にオリジナリティのあるワインを作る
決め手ともなっていますが
改良の自由があまり認められていないのが実情です。
イタリアのワインの場合ぶどうの品種だけでなく
そのぶどうがどの土地で栽培されたかが非常に高く評価されます。
ブルネッロはサンジョヴェーゼ単一品種で作られるワインであり
そのために非常に強い個性をもっていて愛されているのですが
逆にその品種の改良自体も非常に規制されています。
今回のブルネッロ偽造疑惑では
トスカーナで栽培されたサンジョヴェーゼ種以外に
プーリア州など他の土地の畑で育ったサンジョヴェーゼ種が
混ぜられているのではないかというのが焦点となっています。
同一品種であっても育った土地が違えば
その味に違いがでるのは間違いなく
生産者の立場としてその違いを利用して
よりよいものを作ろうとしただけなのだと思いますが
ブルネッロの厳密な規定には
沿っていないというのが摘発の要因。

イタリアではその土地にあった
よいワインの生産を心がけるという流れが非常に強くあり、
その土地の特徴の出るワインが好まれますが
グローバルな市場は同じ方向を向いていないのが実情です。
個性のある嗜好品であったワインが少しづつ単なる飲み物と化し、
味わいの薄い画一的なものになっていく傾向があるようです。
それに対してトスカーナの生産者は
世界の流れに合わせるのか
それともこだわりを持ち続けて個性のあるワインを作るのかで
日々葛藤中。

私はワインは飲まないので
実際どうでもいいといえばどうでもいいのですけれど、
イタリアらしさを失ってほしくないなぁと思うのです。

なんかにこだわって頑固にやっているのが
なんとなくイタリアっぽく
世界に迎合しないのが
なんとなくイタリアっぽく。
ずっとそんなふうでいてほしいの。