不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

L'Ateneo di Adriano

2009-10-13 14:06:08 | アート・文化

ローマに古代の遺跡が多く残っているのは周知の事実で、
特にコロッセオ周辺からヴェネツィア広場辺りは
掘り起こしたらきっと何か出てくる状況。
そんなこともあって、長いこと掘り起こすこともなかったのですが
ローマ地下鉄C線の工事のために
ここのところヴェネツィア広場周辺の
掘り起こし作業が進められていました。

ローマ皇帝ハドリアヌス(Imperatore Adriano)が
アテネの神殿で見かけた討論場を自費で建築したのは
パレスティナから帰還した後の紀元133年といわれていますが、
紀元3世紀に作成された
FORMA URBIS(都市地図)にも記載がなかったため
これまでどこに建設されたのか確定されていませんでした。
そのため長いこと研究者の間では
さまざまな憶測が飛び交っていたようです。

それが今回の地下鉄工事により
やむを得ず、ヴェネツィア広場周辺を掘り起こすことになり
思いがけず、それではないかと思われる建物跡が見つかりました。
その周辺はこれまで一度も掘り起こされたことがなく、
昨年市民の大反対を押し切って古木の松を切り倒し
掘り起こし作業が開始され、調査が進められていました。
10月21日には地下鉄工事に関する
最新の進捗状況が発表されますが
それに合わせて今回のハドリアヌス帝のアテネウムについても
言及されることになりそうです。
既に美術館化の話も出ており、そうなると一部路線の変更や
地下鉄駅の出口の場所変更も考えられます。

ヴェネツィア広場脇のChiesa di Santa Maria Di Loreto
(サンタ・マリア・ディ・ロレート教会)の近くに
幅約20メートルの階段が見つかった当初は
何かの建物へのアクセスのための階段だと考えられていましたが、
今回3メートルの距離を隔てて、
その反対側にも
幅17メートルの同じような階段が見つかったことから
この階段群は昇降用ではなく、
座るために作られたものであることが判明。
片側が短くなっているのは
そこに討論場への出入り口が設けられていたからだそうです。
座面はそれぞれ約50センチメートルで、座段6段。
両階段の間は約3メートル×20メートルの空間となっており
ここで討論者が演説をしたものと考えられます。
その床面は、
やはりハドリアヌス帝が
トライアヌスの円柱の脇に建設した図書館の床と同じ
アンティークイエローの平縁で覆われていることや
二つの建築物が同じ高さにあることから
当時の都市計画できちんと整備され
往来できるようになっていたと考えられます。

哲人皇帝とも呼ばれたハドリアヌスは
詩人、修辞学者、哲学者、
文学者、科学者、司法官などを一堂に集めて
ギリシャ語とラテン語での討論を行わせていたといわれます。
ここがその場所だったのかもしれないのですね。

古代ローマにはそれほど情熱も捧げていないとはいえ、
何か見つかったと聞くと
なんかわくわくするのは私だけ?