不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

I due lottatori di Michelangelo

2010-11-16 23:00:40 | アート・文化

普段はフィレンツェの
Casa Buonarroti(ブオナロッティの家) に収蔵されている
「二人の闘士」をテーマにしたテラコッタの粗形。
ミケランジェロ作であることが
現在では多くの専門家によって認められている作品です。

いくつかの部品で残っていたものが
現在の形にまとめられたのは1926年。
12月5日までローマのカピトリーニ美術館に貸し出し中。

作品は長らく、メディチ家の要請で作成された
「Ercole e Caco(ヘラクレスとカクス) 」の
模型だといわれていました。
実際に1506年にメディチ家から正式にミケランジェロに
制作依頼が出ていることは古文書にも記録が残っています。
しかし、1525年に
本格的にプロジェクトの話がまとまったときには
ミケランジェロは断り、
彼を一方的にライバル視していた
Baccio Bandinelli(バッチョ・バンディネッリ)が
手がけることにまとまっています。
メディチ家追放後の1528年にフィレンツェ共和国政府は
ミケランジェロに改めてこの作品の製作要請を出しますが
ミケランジェロは「ヘラクレスとカクス」という主題を変更して
「Sansone e i filistei(サンソンとペリシテ人)」
の作成にかかります。
フィレンツェ共和制の崩壊とメディチ家の復帰で
最終的に「ヘラクレスとカクス」はバンディネッリに委ねられ、
1534年に出来上がったバンディネッリの作品は
チェッリーニなどから酷評されながらも
ミケランジェロのダヴィデ像と並んで
ヴェッキオ宮殿前に設置されました。

1928年には
テラコッタの粗型の比率では
作品製作のために用意された大理石の大きさと
一致しないことを理由に
ミケランジェロ研究者である
Johannes Wilde(ヨハネス・ウィルデ)によって、
ミケランジェロが残したテラコッタの粗型と
メディチ家の依頼した「ヘラクレスとカクス」は
一致しないことが提示されています。
同じくWildeは
この粗型は1527年から1530年に製作された
ユリウス二世の墓碑彫刻のための
アレゴリー群の中のひとつである可能性を提示しています。
因みにその作品は
現在ヴェッキオ宮殿の500人広間に保管されています。

荒削りのテラコッタの粗型は12月5日まで
フィレンツェのブオナロッティの家を離れ
ローマのカピトリーニ美術館で展示中です。

Michelangelo, I due lottatori
会期: 2010年12月5日まで
会場: Musei Capitolini ローマ
開館時間:9:00-20:00
休館日:月曜日
入場料: 11,00ユーロ