不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il Laocoonte di Bacio Bandinelli

2010-10-19 18:22:02 | アート・文化

ラオコーンはギリシャ神話の登場人物で
トロイの預言者であり、
アポロン神殿に仕える祭司でした。
ギリシャ軍は巨大な木馬を作り、
まるで退散するかのように見せかけ、
翌日その巨大な木馬を
ギリシャからの贈り物だと信じたトロイ市民は
木馬を市内に運び込もうとします。
ちょうどネプチューン(ポセイドン)への
生贄の準備をしていたラオコーンは
この木馬を破壊するように市民を諫め
木馬の腹部に石を投げつけます。
このラオコーンの行為は
トロイの敗北を布告していた女神ミネルヴァ(アテネ)と
ネプチューンの怒りを買い
彼らの命で海から2匹の巨大な蛇が現れ
ラオコーンの息子二人は襲われ
それを助けようとしたラオコーンもやがて蛇に殺されて、
海蛇はミネルヴァの神殿に彼方に姿を消します。
トロイの市民はラオコーンの死を
「神の怒り」の象徴であり「ギリシャの誠意」と理解して
彼らは木馬を市内に運び込み
自ら敗北・滅亡の道を選んだのです。

ウフィツィ美術館所蔵となっている
Bacio Bandinelli(バチョ・バンディネッリ)の
Laocoonte(ラオコーン像)は公開修復が終わって
2010年年初から通常展示となっています。

この作品はヴァチカン博物館に所蔵される
ヘレニズム期のラオコーン像の大理石コピーで、
ラオローン群像のほかに
かの有名なPorcellino(いのしし像)と
Ercole in riposo(休息するヘラクレス)とともに
ウフィツィ美術館の第3廊の端に置かれています。
1762年8月12日のウフィツィの火災の時には
焼け落ちた屋根の下敷きになり40ピースに粉砕。
因みにこの火災でPorcellinoの一部だったはずの「狩人」は
修復不能なまでに壊れ、そのまま喪失しています。

1506年1月14日にローマのオッピオの丘にあるブドウ畑に
突然空いた穴に落下した人がいたために
偶然発見されたラオコーン像は
それ以来古代彫刻の傑作として高く評価され
当時はヨーロッパ各地の貴族や有力者が
挙って購入を申し出たといわれます。
しかし、当時のローマ教皇であったGiulio II(ユリウス2世)は
教皇庁専属建築家だった
Giuliano da Sangallo(ジュリアーノ・ダ・サンガッロ)と
Michelangelo(ミケランジェロ)を即座に現場へ派遣し、
彼らの目で発見された作品の価値を確かめさせ
Tito Flavio Vespasiano(ローマ皇帝ヴェスパシアーノ)の
邸宅にあったと記録される彫刻群であるとの報告を受け
その正当な相続を主張してそのままヴァチカンへ持ち込みました。

Laocoonte_vaticano
ヴァチカン所像のラオコーン像

ミケランジェロを感動させたとも言われるこのオリジナル作品は
多くの芸術家に影響を与えていますが、
1520年にLeone X(ローマ教皇レオ10世)が
枢機卿Bernardo de' Medici(ベルナルド・デ・メディチ)を通じて
コピーを依頼して製作されたのが
ウフィツィにあるバンディネッリの作品です。

Laocoonte_bandinelli_02
ウフィツィ美術館所蔵のラオコーン像

当時はレオ10世からFrancesco I(フランス王フランソワ1世)への
贈り物として製作予定だったのですが、
完成までに教皇が変わったこともあり
Clemente VII(クレメンテ7世)は
フランスには別の古代彫刻を贈り
バンディネッリの作品は1525年にメディチ家の宮殿の庭に置かれました。
その後1671年にウフィツィ美術館に移管されています。

ヴァチカン所蔵のオリジナルのラオコーン像は
ラオコーンの右腕、ラオコーンの息子(長男)の右手、
そして次男の右腕が欠けていますが
バンディネッリはこの3箇所も自分の意思で再現しています。
ラオコーンの右腕が伸びているのはバンディネッリ作です。
オリジナルとは微妙に表現方法が違っているのです。
またラオコーンの臀部に食らいついている蛇の頭も
オリジナルでは随分前に張り出して迫力がありますが
バンディネッリ作では少し引き気味で表現されています。


Bukubuku Koukan VI edizione a Firenze

2010-10-14 20:19:56 | bkbk

また告知が遅れたり、前日にお知らせになった人があったりと
準備がきちんとできなかった第4回ブクブク交換@フィレンツェ。

前日&当日キャンセルもあったりして、
果たしてどれくらい集まるのか
把握できないままの開催となりましたが
結果的には9名の参加。

本当にいつもありがとうございます!!
参加してくださる皆さんのおかげで
次回もまたやろうっという気持ちになれます。

きっと少人数だろうと思って
Cuculiaの小さい部屋に陣取って
レイラとぼちぼち準備を始めたら
3人先に来ていたから奥の部屋に通してあるよと
お店の人が教えてくれました。

Cuculiaは入り口のカウンターのある部屋と
その左脇の小さい部屋と
カウンターの向こうに伸びる廊下沿いにトイレと中庭があって
その廊下の先に大きい部屋、そしてキッチンという造り。
奥の部屋にこもっちゃうと入り口からは見えないので
ぜんぜん気づきませんでした。

大きい部屋をお借りして
集まった人から順にアペリティーボ。

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夏まではブッフェ方式だった
ここのアペリティーボは
秋からワンプレート式になって
キッチンからそれぞれ運ばれてくるようになりました。
日曜日のブランチもこの形式で、お勧め。

Dscf9540
ちょっと塩味が強かったけど、おいしくいただき
さてそろそろ本題へ。

Dscf9541
今回のお題のひとつ。
「お勧めの一冊」
色々個性的なものが並びました。

海外にいるからこそきちんと知っておきたい
「日本語」についてのお話や
ガーデニング専門家による
ヨーロッパ庭園のお話から
絶対自分じゃ買いそうにない不思議な選択まで。

そして皆さん自分の意図に反して
意外な反響があったり、結構面白いものです。

Dscf9542
もうひとつのテーマは「秋」。
もっと食べ物の秋が出揃うかと思いましたが
そうでもなく。
こちらも読みたかったけど、読んでなかったベストセラーや
あぁ読んでみたいと思う本がいくつかあって
皆さんそれぞれに好きなものに目をつけてました。

フィレンツェに限らず海外生活では
日本語の本が結構貴重。
なので手放したくない本もいっぱい。
そういうときには回し読みというルールを適用しています。
読みたい人が次から次へ連絡を取って
手渡しして、またいつか元の持ち主のところへ。
ここでゲットした本もいつかはまたブクブク交換。
実際今回2冊は以前のブクブクで交換した本の再登場でした。

第4回ブクブクで交換された本はこちらでチェック

本選べなかったとか交換する本がないよぉ
という方もぜんぜん気にしないで
遊びに来てもらえればなぁと思ってます。
そこで新しい本と新しい友人と
そして新しい世界に出会えることが
楽しいブクブク交換なのです。
本も名刺も新しい扉を開くための
ただの手段でしかないのですから。

ということで次回は12月初めを予定。
早めに告知します。

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Un pittore per due nemici

2010-10-12 12:57:18 | アート・文化

先週La Pala di Brera(ブレラの祭壇画)を紹介したのは
久しぶりにこの絵画を確認して「卵」が気になったからですが、
なぜ久しぶりに確認したのかといえば、
この絵画がメインとなる展覧会が予定されているから。

ピエロ・デッラ・フランチェスカが仕えた
ルネッサンスの時代の二人の豪傑、
Sigismondo Pandolfo Malatesta
(シジスモンド・パンドルフォ・マタテスタ)と
Federico da Montefeltro(フェデリコ・ダ・モンテフェルトロ)は
どちらも野心家の傭兵隊長でありながら、
非常に公平でまた教養もあり
支配したそれぞれの都市で芸術を保護し、
善政を行ったことでも知られています。
マラテスタのリミニ、モンテフェルトロのウルビーノ。

またどちらも自己のイメージ戦略として
文化や芸術を巧みに利用し
当時の最先端を行く芸術家に多くの作品を発注しています。

そして当時大人気だった
稀代の画家ピエロ・デッラ・フランチェスカに
二人とも目をつけたのです。

ブレラ絵画館とルーブル美術館の間で
取り交わされた交換契約では
2010年からの5年間で
両者の作品を交換し合うことになっています。
この契約に基づきブレラ絵画館では
ルーブルの作品を迎えて
この先6つの展覧会が予定されています。
今回の展覧会では
ブレラ所蔵のPala di Breraがモンテフェルトロ側、
ルーヴルからの貸し出しとなる
Ritratto di Sigismondo Pandolfo Malatesta(肖像画)が
マラテスタ側。

大きさの異なる2点ですが、並べて鑑賞することによって
ピエロ・デッラ・フランチェスカの
画風の明晰さを再認識することができます。
フェデリコとシジスモンドは
どちらも左側面からのプロフィールで描かれていることから
ひとつのテーマ(横顔肖像)での分析も可能です。

Sigismondopandolfomalatesta

Piero della Francesca
Un pittore per due nemici
会場: Pinacoteca di Brera(ブレラ絵画館) ミラノ
会期: 2010年10月27日から2011年1月30日まで
開館時間: 08:30-19:15
休館日: 月曜日、12月25日、1月1日
入場料: 11,00ユーロ


La pala di Brera

2010-10-05 20:21:52 | アート・文化

La Pala di Brera(ブレラの祭壇画)
もしくはPala Montefeltro(モンテフェルトロ祭壇画)
と呼ばれる作品は
聖母と幼子イエスと聖人の聖会話をテーマにした作品で
依頼主であるFederico Montefeltro
(フェデリコ・モンテフェルトロ)も画面右下に描かれています。
作品はPiero della Francesca
(ピエロ・デッラ・フランチェスカ)が
1472年頃に製作したものといわれ、
現在はミラノのブレラ美術館所蔵。

製作時期は確実な文献は残っていないようですが
さまざまな条件からほぼ確定可能。
1474年に受けたOrdine della Giarrettiera(ガーター勲爵士)の
勲章をフェデリコがつけていないことから、
それよりも前の時期であることは確かで、
子供が誕生し、
その後まもなく妻(Battista Sforza)を失ったことで
誓願の証としての作品依頼を行ったと考えられるので
1472年頃とするのが妥当。
聖母にはバッティスタ・スフォルツァの面影もあり、
幼子イエスは息子Guidobaldo(グイドバルド)に
よく似ているという点からも
世継ぎの誕生と妻の早すぎる死を記念したものといえそうです。
またバッティスタが葬られた
ウルビーノのConvento di San Bernardino
(サン・ベルナルディーノ修道院)の記録には
この作品について
1472年にFra Carnevale
(フラ・カルネヴァーレ)によって製作されたと
記録が残っていますが
1474年以降はピエロ・デッラ・フランチェスカ作と訂正されています。
ただし、サン・ベルナルディーノ修道院が
活動を開始しているのは1482年で
それ以前は作品は別のところに置かれていたことになります。
1482年以前の作品の所在は
モンテフェルトロ家の菩提寺である聖フランチェスコ教会や
フェデリコが一時的に葬られた聖ドナート教会と諸説ありますが、
フェデリコの死後まもなく
1482年からサン・ベルナルディーノ教会内に霊廟の建設が始まり
それから329年にわたり、かの地に保管。
1810年からのナポレオンの侵略の影響で
1811年に作品がブレラ美術館に移管され、
それ以来現在までブレラ美術館所蔵となっています。

Piero_della_francesca_046

作品に描かれている聖人は左から
「洗礼者ヨハネ(San Giovanni Battista)」
ウルビーノの守護聖人でもあり、
ウルビーノ公夫人(Battista Sforza)の守護聖人ということで登場。
「聖ベルナルディーノ(San Bernardino da Siena)」
シエナの聖ベルナルディーノと
ウルビーノ公フェデリコは知り合いであり
ウルビーノ公の懺悔を聞く役だったといわれています。
「聖ジローラモ(San Girolamo)」
文芸保護に厚かったウルビーノ公に敬意を表して
人文主義者の守護聖人である聖書翻訳者も登場。
「聖フランチェスコ(San Francesco d'Assisi)」
作品が当初置かれるはずだったかもしれない
菩提寺フランチェスコ教会との関係から登場。
残りの二人は
「聖ピエトロ(San Pietro martire)」と
「福音書記者ヨハネ(San Giovanni Evangelista)」。

聖母マリアの頭上にぶら下がる物体はダチョウの卵。
フィレンツェのルネッサンス建築によく見られる
貝殻のモチーフ装飾の
先端から突き出すようにぶら下がる卵は
そこだけ一層光に照らされて
画面に奥行きを持たせる役割も果たしています。

貝殻はヴィーナスや聖母マリアのシンボルであり、
永遠の美の象徴としても好んで使われる題材で、
卵は聖母マリア処女性原理をあらわす芸術表現の一つで
15世紀の人文主義者にはよく知られていました。
また一般的には卵は生命や創造のシンボルでもあり、
この作品の中では
ウルビーノ公の息子の生誕を暗示しているものともいえます。
モンテフェルトロ家の代々受け継がれた
家紋の一つにダチョウがあるので
このたまごもニワトリではなくダチョウの卵なのです。


IV edizione di Bukubuku a Firenze

2010-10-04 19:29:31 | bkbk

また告知が遅れてあたふたしていますが
第4回ブクブク交換会開催決定です。
参加すると、その楽しさがわかってもらえると思うので
話のネタに皆さんお気軽に一回遊びに来てください。

第1回第2回第3回
それぞれで交換された本はこちらでチェックできます。

「ブクブク交換会とは」
本と名刺を交換することによって
新しい人と人との繋がりを作ったり
新しい世界観への第一歩を踏み出したりする
なんか底知れずわくわくするイベントです。

「参加資格は」
本に対する熱い情熱と新しいことへの好奇心のみ。
活字中毒だったり、
手元の本の処分に困っていたり
いつも同じ系統の本を読んでいるので
新しい分野の本を読んでみたいけど
どこから探していいのかわからないとか
とにかく動機は何でもOK。

Twitter発の口コミサブカルチャーイベント。
誰でも気軽に本を持ち寄って集まって
思うまま語り合いましょうという
ゆるいイベントです。

<<第4回ブクブク交換会@フィレンツェ>>
●開催日時● 2010年10月13日(水曜日) 19:30-21:30
●会場● Cuculia (Via Dei Serragli 3R e 1R/Firenze)
●参加費● 無料
●テーマ● 「秋」「お勧めの一冊」
●参加人数●10-15名 先着順で締め切ります

*今回からアペリティーヴォがブッフェ形式ではなく
ワンプレート形式になりますので
交換会の前の懇談会を兼ねて食事の時間を設けます。
会場での飲食代は各自負担となります。
(アペリティーヴォ6,00ユーロ)
*テーマは広く広く解釈してもらってかまいません。
*文庫、新書、ハードはもちろん
雑誌、漫画など活字媒体であればなんでも可。
*上記の好きなテーマに沿った本を選んで
最低1冊、何冊でもお好きなだけご持参ください。
*名刺持っている方は本に名刺挟んできてください。
*名刺のない方も気にせずに参加してください。

●●当日の流れ(希望的観測)●●
19:15 開場
*テーブルを用意しますので持参した本を並べてください。
19:30 簡単なブクブク交換の説明
19:35 雑談&アペリテーヴォ
20:05 本のプレゼンテーション開始
*それぞれ持ち時間MAX2分で持ってきた本について
熱く語ってください。
(とはいっても適当ですのであまり肩肘張らずに)
20:30 本の交換&交流
*気になった本、気になった人と交流を深めて
本の交換を行ってください。
21:30 解散
*自分が持参した本の数だけ本の交換ができるので
是非面白い本を見つけて帰ってください。

ブクブク交換会の楽しさはたくさんあります。
テーマに沿った本を自分の本棚から選ぶ楽しみ。
ほかの人が選んできた本から交換したい本を選ぶ楽しみ。
自分の選んだ本をプレゼンする楽しみ。
ほかの人が選んだ本のプレゼンを聴く楽しみ。
本や活字の面白さやありがたみを語り合う楽しみ。
本を通じて友達ができる楽しみ。
交換した本を後日じっくり読む楽しみ。
感想をツイートしたりブログに書いたりする楽しみ。
交換できなかった本を探す楽しみ。
交換した本をさらに次回交換する楽しみ。
いつもとは違った仲間と時間を共有できる楽しみ。
ほかにも自分らしい楽しみを見つけるために
是非遊びに来てください。

もっと詳しく知りたくなった人はどんどん質問してください。
参加したくなった方は早速予約!!
1.ブログにコメントで参加表明
2.Twitterで参加表明 
3.メールで参加表明
いずれの場合も参加者のお名前(ハンドルネームでも可)と
参加人数は必ずお知らせください。

今回もたくさんの本と素敵な人に出会えるのを楽しみにしています。