チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

指揮者に先を越されたティンパニ奏者・有賀誠門氏

2014-12-25 18:08:42 | 日本の音楽家

元NHK交響楽団ティンパニ奏者有賀誠門(あるがまこと, 1937-)氏の、N響時代の面白い話が「不滅の交響曲大全集」というレコードの解説書に載っていました。昭和50年前後のものです。


「定期公演でベートーヴェンの第4番の交響曲をやったときである。私はそろそろ出番だろうと楽屋を出ると、ステージ・マネージャーが『ティンパニー!ティンパニー!』と叫んで来るではないか。どうもステージを確認しないで指揮者を出してしまったらしい。さては、と舞台へと走った。時すでに遅し、音は出てしまった。さてどうしようか?

ベルリン・フィルの元ティンパニ奏者アヴゲリノス(Gerassimos Avgerinos, 1907-1987)氏の話が頭に浮んだ。それはヤニグロ(Antonio Janigro, 1918-1989)が客演した時、氏は開演に遅れてしまい既にオーケストラは鳴っているし、仕方なしにまた自宅へ引き返したというのである。そして翌日の新聞批評には、なんと『ヤニグロはモーツァルトの交響曲をティンパニなしの新しい解釈で演奏した』と出たという。

しかし、4番の場合はどうだろうか、1楽章は良いとしても、2楽章は....そう!ティンパニ・ソロが出てくる。こんなことを考えながら舞台の袖にいる私を見て、指揮者はビックリ仰天。そりゃそうでしょう、ティンパニなしで始めてしまったんだから。1楽章のイントロも長いし、意を決してステージに忍び込んだのであった。」

↑ 有賀誠門さん


。。。。有賀さん、新解釈としての帰宅路線も頭をかすめたわけですね。