チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

文部大臣に陳情する藤原義江(国立劇場問題、1959年)

2016-09-12 20:39:11 | 日本の音楽家

難航したという国立劇場建設に関して文部省や都庁に陳情を続ける藤原義江(1898-1976)が週刊新潮1959年9月14日号に大きく取り上げられており、彼の別の面を見たようでした。この頃は本業のオペラの稽古も手につかなかったようです。

↑ パレスハイツ跡(米軍接収地)にて藤原が担当する「現代芸能(第二劇場)」の構想を思案中。

 

↑ パレスハイツ跡には雑草が茂り、米軍接収当時の水道タンクがところどころに突っ立っている。

 

↑松田竹千代文部大臣(愛称・テキサス無宿、1888-1980)に国立劇場建設を陳情する藤原義江。大臣はあまりオペラに興味なさそうだし(?)ふんぞり返っててなかなか言うことを聞いてくれなそうな雰囲気ですね。

 

記事によると

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国立劇場建設が順調に進まないのは、三つの難点があるためだそうである。都庁建設局から指摘された三点は

1. パレスハイツ跡が住宅地に指定されているため、予定した建物も高さ39メートルがとれないこと。

2. 駐車場に十分な敷地がないこと。

3. 地下に二本の高速道路を作る計画があるため地下や奈落を掘ることができないこと。

都庁の意見を調整して一日も早く着工したいと藤原さんは精力的にかけまわっている。「欧米ではどの国でも立派な国立劇場をもっています。ぜいたくな事はいえませんが、貧乏国なりにもぜひ国立劇場が欲しい。オペラやバレエの専門劇場が日本に一つもないことは文化国家として恥ずかしいことじゃあないでしょうか......」国立劇場問題に異常な熱意をもって語る。

「国立劇場が完成したにしてもその中の入れものが貧弱ではなんにもならない。オペラでもバレエでも欧米のものに比べて見劣りしないものを育てることが必要です。それには国がもっと暖かい目で見てもらいたい。政府からは一銭の援助もなく、オペラ・バレエ・シンフォニーなど逆に高い税金を支払わされているんです。ドイツなどでは政府が積極的に援助しているんですがね......」

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↑ 藤原歌劇団稽古場でオーケストラ団員と語る藤原。なぜかシューベルトのシンフォニー(「未完成」か?)ですね。「最近、オペラを志す若い人たちは、すぐ主役ばかりをやりたがる。芸事ばかり昔の職人気質が必要だと思いますね。オペラの世界では約3分の2ほどが職業の選択を誤っているんじゃないでしょうか。」



。。。国立劇場は1966年に開館されましたけど、日本の伝統芸能向けの仕様に藤原さんの「コレジャナイ感」は半端なかったと想像されます。新国立(1997年開館)は彼の執念の賜物なのか?