ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2016.8.28 旅行3日目 雨降りのジャイプール観光を終え、タージマハールの街アグラへ

2016-08-29 02:03:07 | 
 昨夜は何とか日付が変わる前にベッドに入った。モーニングコールより小一時間早く目覚め、その後はベッドで静かに時間が来るまで休息。早朝からびっくりするほどお腹が快調なのは、もしかすると壊す一歩手前なのかもしれない。そう思っていたら、なんと夫が一足先に大変なことに。

 朝はどうも食欲がない、とビュッフェから随分少なく取ってきていた。私も生ものは止めておこうといいつつ、オムレツを焼いてもらって果物とフレッシュジュースにチャレンジ。
 チェックアウトの時間間際まで何度もお手洗いに駆け込む夫。これは大変、である。ひとまず私が持ってきた漢方の下痢止めと整腸剤を渡して飲んでもらう。

 集合時間ぎりぎりにバスに乗り込む。おや、ちょっと雲行きが怪しいと思っていたら、バスに乗り込むや否やスコールが。すぐに止みますから、とガイドさんは言うけれど、なかなかそうでもない。それにしてもインドの方たちは傘もささず、雨宿りしているかそのまま歩いているか。道路の水はけが悪く、いきなりあちこちに大きな水たまりが出来ている。

 今日の観光は世界遺産のアンベール城からスタート。丘の上のゴージャスな宮殿への足は、20年ほど前に秋篠宮殿下がお乗りになったという象のタクシーが有名だ。最初は乗るつもりだったのだが、雨降りだし、夫のお腹の調子を考えて私たちは早々に諦めてジープに乗り込む。他のご夫婦たちはぎりぎりまで象に乗ろうと待っていたが、雨が止まずに時間切れ。6人乗ってギュウギュウに詰め込まれたジプシーで登っていく。途中の石畳の坂道にはイノブタが餌を食べていたり、路上で牛が死んでいたり、生と死が共存している。

 山の尾根に長々と這う城壁と中腹の宮殿は、歴史絵巻の一部のような光景だ、とガイドブックにあるとおり、到着すると万里の長城を彷彿とさせるあまりの絶景に息をのむ。雨が小やみになったり、また降ってきたりでどうにも傘が邪魔なのが残念である。昨日はこんなお天気でも雨季なのね、と呑気に思っていたが、こうなるとやはり雨季が恨めしい。

 ここアンベール城は誇り高き砂漠の国の戦士、ラージプート族のマハーラージャが建てたもの。16世紀のアンベール王国の首都だ。岩山に聳える荘厳な外観は圧巻の一言。微細なモザイクと華やかな色どりのガネーシャ門の透かし彫りは実に美しく、ヨーガのレッスンでガネーシャのマントラを唱えたことを思い出し、有り難く拝む。壁と天井に鏡細工を施した鏡の間など、見所は満載。語彙の貧困を嘆きつつも「凄いね、素晴らしいね、来てよかった、見られてよかった」を連発した。

 帰路は雨が小やみになり、次々に寄って来る物売りたちのしつこさに辟易。ああ、少し時間がずれていたら象に乗って上がってこられた、と二組のご夫婦がしきりに残念がっておられた。

 小一時間かけて見学した次には、ラクダの骨を使った細密画の専門店へ。ここで、気に入ったガネーシャの額絵を購入。ルビーやアメジスト、ラピスラズリやクジャク石等を使った色とりどりの美しい絵にうっとり。他にも目の保養をして温かいマサラチャイを頂いて一休み。その道々でも夫は何度も何度もお手洗いに駆け込み、かなり大変な模様。なんといってもお手洗い事情が悪いし、毎回他の方たちをお待たせすることになるので、不安は募る。ガイドさんに状況を話すと、「インドの下痢は日本の薬やポカリスウェットでは効かない。後で良く効く薬をあげるので、自己責任で飲んでください」とのこと。

 次なる目的地はピンクに塗られた城壁にぐるりと囲まれた旧市街にある宮殿、シティパレスだ。現在、マハーラージャが住んでおり、一部が博物館として公開されている。ラージャスターンとムガールの二つの様式が融合した建築として有名だという。ここでも雨足が強くなり、往生する。一部は博物館となって公開されており、王様の衣装など豪華な生活を拝見。

 その後は、隣接するモダンアートと見まごう美しき天文台、ジャンタル・マンタルへ。約300年前に造られた天文観測施設でありながらも、現代においてほぼ正確に時や星座の位置を刻み続ける世界遺産だ。ジャンタル・マンタルとは何やら呪文のような言葉だが、「計測器」を意味する「ヤントラ・マントラ」がなまったものだそうで、サンスクリット語で「魔法の仕掛け」という意味があるという。

 あいにくの土砂降り。そのため、ガイドさんの日時計の説明にも熱が入らない。太陽が出ていれば、実感できるものの、無情に降り続く雨が恨めしい。12星座を観測するという建造物が並んでおり、乙女座(夫)とふたご座(私)の建物の前でそれぞれ記念写真を撮ってきた。ふたご座のシンボルが夫婦になっているのにはちょっとびっくりしたが、インドではそういう伝来の仕方をしたようだ。緑の美しい公園なので、お天気だったらどんなに楽しかっただろう、と言っても詮無きことがついつい口に出る。夫は、とりあえずガイドさんから薬を頂くが、なんとも口数が少なく、可哀想。こちらも快調を通り越して、なんとなく腹痛が伝染してくる。

 最後は風の宮殿へ。ジャイプールのシンボル的存在で、昔、姿を見られることを禁じられていた後宮の女性たちが、顔を見られることなく風通しのよい小部屋から祝祭の行列や町の様子を眺めたという。前に張り出したテラスにはステンドグラスが装飾されている。通りに面した前面からは大きな宮殿だが、横から見ると奥行が殆どない、不思議な造りだ。ここでも土砂降り。物売りが寄ってきて追い払うのにやっと。トホホである。

 続いてお約束のショッピング。昔からインド中の宝石が集まる街ジャイプール。宝石店に行ったけれど、最初から買う意思もなく、ぐったりする夫が休憩させて頂くにとどまった感じ。買わない客にはお店の人も「あ、そうですか」と実にそっけない。
 さらにインドが生み出した織と染の芸術、テキスタイルの本場のジャイプール。ブロックプリントを見学できるサラサの店へ。スタンプを何度も重ねてあっという間に素敵な模様が仕上がる。これもまたお裁縫とは無縁の私が布地を買って帰っても、ということで見るだけで退散。ツアーの誰もお買い上げがないとなれば、早々に切り上げてレストランへ移動した。

 ランチは中華とインド料理折衷のレストランで。ガイドさんが夫にお粥を注文してくれる。可哀想に皆が焼きそばやチャーハン、カレーを頂いているのに一人殆ど味のないお粥を啜る夫である。この後はまた6時間ものバスの移動が待っているので、やはり不安が大きい。
 何かに当たったというよりも寝不足と疲労による胃腸炎ではないかと思う。昨日のお昼のタンドリー料理の食べ過ぎではないかとも。腹八分目が医者いらずとはよく言ったものだ。まさか私より夫が先にこんなことになるとは、やはり世の中何が起こるか分からない。渋る夫を強引に連れてきた私としては、ちょっと立つ瀬がない。

 そして230Km、6時間をかけてバスはアグラに向かう。昨日の高速はムンバイに向かう長距離トラックが多かったので事故もあり、渋滞で大変だったが、今日はそれほども混まないだろうとのこと。確かに順調。さすがに疲れて乗ってすぐ1時間ほどウトウト。夫もとりあえず寝ている様子でハラハラしつつもほっとする。2時間ほど走ってお手洗い休憩。こちらは雨も降らずにムッとする暑さだ。

 アグラの街に近づくと、パレードと遭遇する。狭い道でもう滅茶苦茶な運転。逆走があっても何の交通規制もなし。よくも事故が起こらないものだとある意味感動する。男性ばかりが目につき、若い女性の姿は本当にない。何やら考えさせられる光景である。それでも皆、イライラしている様子もなく、諦観している様子でもなく、淡々とただ受け入れているように見える。なんだか完全にノックアウトされた気分。もしインドに生まれていたら私はとてもではないけれど生き延びられなかったのではないかと思うほど、むせ返りそうな強靭な生命力に圧倒される。到着直後にガイドさんが是非自分の目で見て、インドで「生きている」ということを感じてください、と言っていたのを思い出す。

 ようやくホテルにチェックイン。一度部屋に入って荷物を置いた後、ガイドさんととんでもなく車が疾走する道を渡ってカシミヤのお店に向かう。母や息子のお土産を買ってホテルで夕食。ここでもお粥を食した夫。明日は少しでも普通の食事が出来るとよいのだけれど・・・。

コメント (2)
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