ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2017.12.18 いつもこの本を心のどこかに~死ぬときに人はどうなる10の質問

2017-12-18 21:33:02 | 読書
 愛読している緩和医療医の大津秀一先生のブログで、「死ぬときに後悔すること25」(このブログでも紹介させて頂いたことがある。)の続編が文庫化されたと知り、早速注文して拝読した。光文社知恵の森文庫の最新刊である。

 帯には「“最期の時”について考えてみませんか?」とある。
 裏表紙には「悩みのない人間はおらず、だれもが生きる上でそれぞれの問題を抱えています。私がその問題を解決することは、残念ながら出来ません。しかし、皆さんが自分の問題を解決するときに力となる方法が一つあります。(中略)それは、死を考えること、なのです。自らの死を、です」(本書より)とある。

 人が色々なことに不安になり、一番恐怖を感じるのは「わからないこと(経験したことのないこと)」に対してだという。わかっていることなら対策も立てられるし、自分であらかじめ準備をすることもできる。けれど、こと自分が死ぬということについては自ら予習して体験してみることが出来ない。三途の川を渡りかけたけれど、蘇生しましたという人が、そのお花畑のような情景を語るなどということもあるようだけれど、本当の意味ではまだ亡くなっていないわけだから、実際に死出の旅に出た人から話を聴くことは叶わない。

 先生のこの書は、題名のとおり10の質問とその答えから成っている。
 1 死を語るあなたは何者ですか?  -こういう人間です。
 2 死ぬときに人はどうなりますか? -こうなります。
 3 人はどんな風に思って死んでいくのでしょうか? -迷いながら、受け入れて、です。
 4 人は死期を語るのでしょうか? - おそらく、そうだと思います。
 5 健康に気を使っていれば、死ににくいですか? -そんなことはありません。残念ながら。
 6 なぜ死を見つめることが必要なのですか? -人間は意外に楽観主義だからです。
 7 死後の世界について言い切らないのはなぜですか? -死後の世界も、人それぞれだから、です。
 8 孤独死は不幸でしょうか? -必ずしもそうではないと思います。
 9 死とは不幸ですか?死ななければ幸福ですか? -物質的な成功では死を乗り越えがたいのは事実です。
 10 死をも左右する力を手に入れた人間は、本当に偉いのでしょうか? -偉くもあり、愚かでもあります。

 詳細は是非手に取ってお読み頂きたい。
 特に2についてきちんと自分で理解しておくことは本当に必要だ、と思った。死に至るまでの経過は3つに分類される。そのうち、がんという病は比較的長い間機能が保たれ、最後の2か月くらいで急速に機能が低下するものだ。特に今では医学の進歩により薬でかなりコントロール出来るようになったせいで、最後の経過があまりにもあっという間で、あんなに元気だったのに、なぜ、と本人だけでなく周りの家族も受けいれるのがとても難しいという。

 余命が週単位になった時の症状は、全身倦怠感、それも普通の程度のものではない、なんとも形容しがたい辛さだという。ステロイドでそれが緩和出来なくなってきたら、命が終息するまでの時間はかなり短くなっているということだろう。それを知っていれば、そうなる前にやれるべきことはやっておかなければならない、動けるうちに動いておく、ということを肝に銘じておかなければ、と思う。
 その後の余命日単位、余命時間単位の描写は読みながらかなり辛いものだったけれど、それでもきちんと頭に入れておかなければいけないと思った。言いたいことは言えるうちにきちんと伝えておかなければ、と強く思う。
 そして、家族にもこのことをきちんと知っておいてほしいと思う。
 聴覚は最後まで保たれるというのは今ではよく知られていることだけれど、この段階において患者は既に苦痛から解放されて夢の中にいるような状態にあり、一方で声がしっかり聞こえているだろうということだ。だから、家族にとって、辛そうに見える(本当はもう辛くない)患者の傍らにいるのが辛くとも、最後まで患者のそばにあってほしい、耳元で優しく語りかけてあげるのも良いだろう、と書いておられる。

 現代は死を話題にすることがタブーにされ過ぎている時代なのだと思う。いつのまにか家で亡くなるよりも病院での死が多くなり、人の死を身近に見ることがなくなって久しい。
 けれど、冷静に考えれば皆、生身の人間なのだから、いつかは必ず死んでいかなければならないものだ。そして、今この瞬間を生きていられるのは本当に奇蹟なのだけれど、そのことを忘れすぎている、と思う。

 こうして10年近く再発治療を続けている私でさえも、もしかしたらこのまま薬で完治する日がくるかもしれないという一縷の希望がないといったら嘘になる。
 けれど、きちんと今を生きるために、死ぬことをきちんと考えることはとても大事なことだと改めて思う。
 先生のこの書は、いつも心の中に持っておかなければならないと思うのである。


 
コメント
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