夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

飛田で生きる。

2015年04月19日 | 映画(番外編:映画と読み物)
飛田新地をぶらぶら歩いたのはいったい何年前のことだったか。
この日記に書いたのが2005年、神代辰巳監督が亡くなったのが1995年なので、
おそらく今から20年前だったと思います。
行きたい行きたいと思いつつ飛田の“鯛よし百番”にも行かずに現在に至る。

阪急梅田駅構内のブックファーストに立ち寄ったとき、
店頭に平積みされていた遊郭に関する本あれこれ。
なぁに?今ブームなの?と興味を惹かれて買いかけましたが、
家に帰れば未読の本が150冊以上あるのにとグッと我慢。
しかしやはり気になって、そのうちの1冊を注文しました。

『飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白』という本です。

著者の杉坂圭介氏は、30歳を少し過ぎた頃にリストラに遭い、
深夜のファミレスでアルバイトをしながら就職活動。
そんなとき、高校時代の不良先輩から何年かぶりに連絡があります。
どこで聞きつけたのか、杉坂氏のお父様が亡くなって、
保険金数千万円を杉坂氏が受け取ったことを先輩は知っていました。
それを元手に遊郭のオーナーにならへんかと。

オイシイ話には罠がある。そう警戒はしながらも、甘い言葉に乗ってオーナーに。
2002年に店を持ち、10年続け、現在はスカウトマンとして関わる杉坂氏。
飛田では、中のことを外の者が触るべきではないと、
写真撮影はいっさい禁止、マスコミの取材に応じることもほぼ皆無だそうです。
だけど、あべのハルカスなどもでき、消されてしまうかもしれない遊郭。
実情を書くことで、この街がなぜ必要とされてきたのか、
これからも必要であるということを杉坂氏は訴えています。

ヤジウマで読みはじめ、読みおわった今もそのノリのままではありますが、
ほぉぉぉぉ、へぇぇぇぇと思うことたくさん。
飛田のトイレはすべて和式。そのほうが局部を洗いやすいから。
飛田以外の新地にはシャワーのあるところもあれば、公衆便所しかないところも。

いちばん目からウロコだったのは、
遊郭を利用した客にはどの店でもペロペロキャンディーを渡すということ。
キャンディーを舐めているお客さんはすでに「終了」しているので、
おばちゃんたちも声をかけないそうです。そんな目安があったとは。

新規開業に当たっての申請等、手順あれこれ。
店を開けられると決まったら、今度は女の子のスカウトに奔走。
できるだけたくさんの女の子を店に置いておくのだと思いきや、
店が抱える女の子がみんなちゃんと稼げるように、数人だとか。
飛田で働こうとやってくる女の子の諸事情。
女の子同士のトラブルなどなど。親方稼業は楽じゃない。

飛田を歩いて衝撃を受けた私としては、
さまざまな事情を知りもせずに、治安がどうとか外聞がどうとか、
そんな建前だけで消えてほしくはないなぁと思うのでした。

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