夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『王妃の館』

2015年04月29日 | 映画(あ行)
『王妃の館』
監督:橋本一
出演:水谷豊,田中麗奈,吹石一恵,尾上寛之,青木崇高,中村倫也,安達祐実,
   山中崇史,野口かおる,山田瑛瑠,緒形直人,石橋蓮司,安田成美,石丸幹二他

この間の日曜日と“昭和の日”、どちらに何を観るか検討。
水曜日である“昭和の日”に観られる作品の前売り券を買うのはもったいない。
悩みに悩んで、日曜日はとりあえずこれと後述の1本を選択。
GW仕様なのか、大阪ステーションシティシネマは8時台スタートの作品が目白押し。
本作は8:15上映開始で、平日仕事に行くときよりもずっと早く家を出ました。

『きんぴか!』『プリズンホテル』『オー・マイ・ガアッ!』ほどではなかったけれど、
そこそこには面白かった浅田次郎の『王妃の館』。
映画化すると聞き、キャストの面々を眺めてよぎる一抹の不安。
とにかく原作のイメージとちがいすぎる。ピッタリと思える人が一人もいない。
不安は的中どころか、途中で退席しようかと思うほど。
原作台無しのぶちこわしやんかいさ。以下、怒りのネタバレです。

パリのヴォージュ広場の片隅にたたずむ超一流ホテル“シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ”。
「王妃の館」を意味するこのホテルは、そもそもは太陽王ルイ14世(石丸幹二)が
寵姫ディアナ(安田成美)と息子プティ・ルイ(山田瑛瑠)のために建てたもの。

“シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ”に10日間滞在できる2通りのツアーが企画される。
一方は旅行代金150万円、もう一方は30万円を切る設定。
参加者は前者が4名、後者が5名で、お互いに他方のツアーの存在については知らされていない。
前者の客は朝から夕方まで観光、夜は豪華な客室で睡眠。
後者の客には日中を客室で過ごさせて、夕方以降に観光、夜は屋根裏部屋へと誘導。
完全にダブルブッキングのこのツアーを企画したのは、
倒産寸前の旅行会社の女社長・朝霧玲子(田中麗奈)。
豪奢な見た目とは裏腹に、厳しい経営状態に陥っているホテル側もこの話に乗り、
朝霞の部下で気の弱い戸川(尾上寛之)は異議を唱えることができなかったのだ。

150万円の「光(ポジ)ツアー」には朝霞が同行し、
30万円足らずの「陰(ネガ)ツアー」の添乗員は戸川が務める。
ふたりは隠密に連絡を取り合いながらパリ観光とホテル滞在を進めるのだが……。

「ポジ」の客は、売れっ子作家・北白川右京(水谷豊)、三十路の独身OL・桜井香(吹石一恵)、
成金の金沢貫一(緒形直人)とその連れ・ミチル(安達祐実)。
「ネガ」の客は、警察官の近藤誠(青木崇高)、オカマのクレヨン(中村倫也)、
出版社に勤務する香取良夫(山中崇)と早見リツ子(野口かおる)、元詐欺師の丹野二八(石橋蓮司)。

原作では決して北白川だけが主人公ではなく、
十人十色のツアー客の事情、個性、言動、行動のすべてが面白かったのに、
なぜこの人がこのツアーに参加したのかが見事に端折られ、
その人のこれまでの人生もまったくわからず、個々の魅力ゼロ。
単に変な人がたまたま居合わせてドタバタしている、それだけの話になっています。
原作に登場する愉快な参加者がいなかったり、
コンビが分断されていたり、そもそもの立場が異なっていたり。

マイペースでワガママな作家のはずの北白川も、
本作ではツアーの和を乱すことなく、おとなしく観光に参加。
達観した作家のように描かれていて、台詞がいちいち説教くさい。
プティ・ルイが宮殿に向かう途中でいじめっこたちが歌いはじめるシーンが最悪で、
原作では少なからずホロリと来たのに、なんだこれは。
ミュージカルちゃうっちゅうねん。観たくも聴きたくもない。

ヅラをかぶっている設定の緒形直人は気持ち悪すぎるし(すみません)、
石橋蓮司も本作に出る意味なし。
最近好きだなぁと思っていた青木崇高にもガックリ。

いや、考えてみたら、役者ひとりひとりはみな良い役者で、
演技自体は悪いものではないのですよね。
水谷豊主演で「ホテルでダブルブッキング」というアイデアだけ反映させたのが×。

今年観た映画の中で、DVD作品を含めても最悪。
「がんばってるアピール」「オッサンオバハンの妄想」であれば、
こういうのが好きな人もいるんだろうな~と思えますが、
これはそういった要素がなにもないのに駄目、駄目、駄目。

ひさしぶりかも、こんなに罵倒したのって。
それでもどう映画化されているのかを自分で観たかったから、カネ返せとは思いませんけど。
たぶん、浅田次郎の作品は、シリアス路線のものならば万人受けする映画にしやすい。
巧みな文体で笑わせてくれる路線のものは、映画化するのがむずかしいように思います。

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