夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『僕たちの家に帰ろう』

2015年12月04日 | 映画(は行)
『僕たちの家に帰ろう』(原題:家在水草豊茂的地方)
監督:リー・ルイジン
出演:タン・ロン,グォ・ソンタオ,バイ・ウェンシン,
   グオ・ジェンミン,マ・シンチュン他

前述の『3泊4日、5時の鐘』の鑑賞後10分経過、同じく元町映画館にて。

急速な近代化を遂げる中国では、草原が日に日に減少している。
中国北西部、放牧で生計を立てるユグル族は、
草原を求めてより奥地へと移住をくり返さざるを得ない。
そんな生活のため、幼い兄弟バーテルとアディカーの両親は、
兄バーテルを遠方に暮らす祖父に預け、弟アディカーを学校の寮へ入れる。

バーテルは両親の愛情をアディカーに奪われたと思い込む。
しかしアディカーはバーテルのことをずるいと思っている。
バーテルを祖父に預けた負い目から、
両親がバーテルにばかり服やおもちゃを買い与えるからだ。

ある年の夏休み前、バーテルが登校しなくなる。
先生から言われてバーテルの様子を見に祖父宅へ行ったアディカー。
すると、バーテルが見守る中、祖父は病死していた。

それだけでも困ったことなのに、
夏休み前にはアディカーを学校に迎えに来るはずの父親が一向に姿を見せない。
祖父の死を父親に伝えなければ。
兄弟はラクダにまたがると、両親を探して旅に出るのだが……。

日本を除き、アジアの作品を観る機会と比べると、
欧米の作品を観る機会が圧倒的に多いから、
たまに中国の作品を観ると、入り込むまでにしばし時間を要します。
これもそうで、最初は睡魔に襲われかけました。

が、すぐに目が覚めて頭もスッキリ。
幼い兄弟がそれぞれに複雑な思いを抱え、喧嘩しながら進む道中。

水分の補給やその量、移動する時間帯について細かく考えるアディカーに対し、
被害者意識を募らせ、終始ふてくされた態度のバーテル。
そりゃアカンやろと腹立たしくなる振る舞いまであり、
アディカーがんばれと応援したくなります。

けれど最後の最後はやはり兄弟。
鼻を垂らしながらアディカーがバーテルに語りかけるシーンに涙。

思いもよらぬラストシーンには、兄弟よりも私が凹みました。
凹んでいるときにしばし映る、兄弟が一瞬寄り添う姿にちょっぴりホッ。
爆買いの中国人だけではない、今もこんな暮らしを送る人々。
そんな人々をも呑み込んでしまう近代化の波を見せつけられます。

だけど。負けるな、ちびっこたち。誇りを持て。

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