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『黄金のアデーレ 名画の帰還』

2015年12月06日 | 映画(あ行)
『黄金のアデーレ 名画の帰還』(原題:Woman in Gold)
監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン,ライアン・レイノルズ,ダニエル・ブリュール,ケイティ・ホームズ,
   タチアナ・マズラニー,マックス・アイアンズ,ジョナサン・プライス他

前述の『007 スペクター』とハシゴ。
TOHOシネマズ梅田本館から別館アネックスに移動して。
相変わらず和式のトイレに、毎度の女性客の悲鳴。「え~、全部和式ぃ?」
1カ所しかないんです、洋式は。

“黄金のアデーレ”として知られる“アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I”は、
帝政オーストリアの画家グスタフ・クリムトの代表作。
この絵にまつわる実話を映画化したのが本作。

ユダヤ人女性のマリア・アルトマンは、オーストリアで生まれ育った。
しかし、ナチスドイツに占領された祖国から脱出せざるを得ず、
愛する両親に別れを告げ、命からがら夫とともにアメリカへ亡命する。

1998年、82歳になったマリアは、姉ルイーゼの葬儀を執る。
戦友ともいえる姉の遺品を整理するうち、
彼女が“黄金のアデーレ”の返還を望んでいたことを知る。

“黄金のアデーレ”はマリアとルイーゼの伯母アデーレの肖像画。
アデーレの夫である裕福な実業家フェルディナント・ブロッホ=バウアーが、
クリムトを支援するために注文、1907年に完成した肖像画だった。

伯母夫妻はマリアとルイーゼを自分たちの子どものように可愛がった。
しかし、アデーレは若くして病死、フェルディナントはスイスに亡命するも、
“黄金のアデーレ”を含む彼の資産はナチスに没収されてしまう。

フェルディナントの遺言では、資産の後継者として姪姉妹も含まれていた。
ルイーゼの遺志を汲み、美しく優しかった伯母の思い出を取り戻したい。
そう考えたマリアは、友人の息子で駆け出しの弁護士ランディ・シェーンベルクに相談。

話を聞いたランディは、面白い話だとは思うものの、
“黄金のアデーレ”は“オーストリアのモナリザ”と称される至宝。
オーストリア政府がこれを手放すわけがない。
妻子を養わねばならぬランディはこんなことに関わる暇はないと断る。
しかし、自らの祖父の祖国もオーストリア。
この件がランディの頭から離れなくなり……。

『ミケランジェロ・プロジェクト』を先月観たところ。
ナチスドイツに略奪されたものをあんな形で奪還したのに対し、
こちらは当時奪還できなかったものを戦後何十年も経ってから、
こんな形で取り戻したのだと思うと興味津々。

アメリカ/イギリス作品で、フェアとは言えないかもしれません。
オーストリア人が観れば文句のひとつも言いたくなるでしょう。
オーストリア政府も一般人も悪意ある人物に描かれています。

そんななか、ダニエル・ブリュール演じるオーストリア人記者は、
マリアとランディに協力を惜しみません。
自国の過ちを認めなければ前に進めないと思っているから。

「何年前のことやねん」という言葉は、日常でもしょっちゅう聞く台詞。
被害者がいつまでも根に持っていると言いたげに加害者が吐くけれど、
それはやっぱり加害者側が言ってはいけない台詞なのでは。

マリア役のヘレン・ミレンには品があり、下世話な話にはなりません。
何年か前まではスカヨハの旦那のイメージしかなかったライアン・レイノルズも、
このランディ役といい、『白い沈黙』の夫役といい、
別れてからいい役が回ってくるようになったなぁと思います。

一方の言い分だけだから、そこは鵜呑みにしないとして、
こういうことが事実としてあったということは知っておきたい。
見応えがあります。

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