山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

美しい時代劇「散り椿」

2018-10-02 19:44:38 | アート・文化

 黒沢組でカメラマンをやっていた木村大作監督の「散り椿」を観る。監督は、「剱岳・点の記」で命がけの撮影で日本アカデミー賞最優秀監督・撮影賞を受賞しただけに、オールロケのすべての自然描写といい建物の荘厳さといいカメラマンらしい美的視点が際立つ。最後のシーンも林立する杉並木のスケールを借景に人間の愛情の機微を暖かくも静かに応援する。(画像は東宝パンフから)

 

            

 「散り椿」とはあまり聞かれなかった椿だが、花弁が一枚ずつ散っていくという珍しい椿であり、一木に白から赤まで咲いていく「五色八重散り椿」だ。静謐でいて華やかなこの椿で何を語ろうとしたのだろうか。登場する女性の姿でもあり、主人公である岡田准一・西島秀俊らの生きざま・愛の形なのだろうか。登場人物の所作の美しさも見ものだが若い人には退屈になるかもしれない。

            

 圧巻は岡田准一の殺陣のキレと美しさだった。本物の豪雨の中の斬りあいシーンは「七人の侍」や「用心棒」を彷彿とさせ、黒沢映画のベースが所々に観られる。主人公が語る「大切に思えるものに出会えれば、それだけで幸せだと思っております」とは、監督が黒沢明や高倉健らと出会った経験から出た言葉らしい。

 原作の葉室麟は昨年12月に病死してまもない。彼の時代小説のパターンは、本映画もそうだが藩の中枢の不当な権力構造がありそれに名もない武士が身命を賭してピュアに立ち向かうというストーリーが多い。それは最近の政権中枢やスポーツ界の腐敗と似た構造だ。「大切に思える出会いの機会」が遠のく現実から、それをどれだけ手繰り寄せられるかが生きているわれわれの手腕だ。

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