国道に「イワタバコ」の花が咲いていた。きょうの雨で紫の花も終わりに向かっている。しばらく通過していないが、イワタバコだらけの岩壁がある見事な県道に感激したことがある(おまけに触ってみたらヤマビルが手に張り付いしまって懲りたことがあったけど)。それ以来、もっと身近な場所にイワタバコ群落がないものかと願っていたところだ。それが7~8年前からだんだん群落ができてきたのだった。
この紫色のモダンな花が魅力でもあり、湿った岩壁に張り付くように生きている健気さと力強さが心をホッとさせてくれる。現代俳人の平子公一氏の俳句「透きとほる雨後の谺や岩煙草」が秀逸だ。イワタバコがあえて岸壁や日陰という厳しい条件を選択し、他の植物が入り込みにくい場所を生存戦略としているのが素晴らしい。
この場所は年々イワタバコの群落が広がっているのがわかる。その理由は崩落防止に配置された岩壁の網にある。この網がなかったら盗掘の対象となったことはあきらかだ。まだ7~8mくらいの範囲の群落だが、来年には10mに達する群落になりそうな勢いがある。ちょっとした名所になる可能性もあるが、意外に知られていないのが幸いしている。