ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

電子書籍元年2010 №14 インターネットと脳

2010-09-19 | Weblog
 電脳という語は、いまでは化石のように眼に写り、死語のごとく耳に響きます。電子頭脳の略で、コンピュータの訳語でした。日本の法律ではコンピュータの正式訳語は、いまでも「電子計算機」だそうです。
 コンピュータが大進化を遂げ、インターネットがわずか10余年にして、われわれに不可欠な情報インフラになりました。現代では電子の頭脳が、人間の頭脳に大きな影響を及ぼしているのではないか?

 例えばネットサーフィンやハイパーリンクをしていると、わたしたちの眼は、この情報が必要か? 自分にとってどれほどの価値があるのか? 不要な情報か? キーワードを追い、斜めに読み飛ばしながら、短時間で判断し、取捨選択しています。
 情報は大洪水をおこしています。あまりにも多すぎる。玉石混交のなかで、パッパッと必要な項目を決めているわけです。この現象を、ニコルス・G・カーは一種の中毒だと記しています。
 ウェブ使用率の高いひとほど、長い文章に集中することが苦痛になってくる。わたしの拙いブログでも、「もう少し文を短くできませんか? 長い文章は読む気が失せます」。何人にもいわれました。液晶ディスプレイなどもつらい原因でしょうが、確かに機械上の文字は読むと疲れます。もしかしたら、片瀬文のつまらぬ内容と文章力をいっておられるのでしょうか。いずれにしろ、やはり紙の本が、いちばん長時間集中できます。

 ネットの大陸を飛びまわっていると、どうも脳の回路、思考の仕方が変化しているようだ。人間の脳は高速データ処理機のようになり、人間の生理的脳は電脳化してしまうのではないか?
 そのために、大量のウェブ情報を追いかけるひとほど、長いひとつの文をじっくり深読みできなくなってしまう傾向がみられる。ニコルス・カーの見解です。

 アメリカでは、余暇時間の30%をネットに費やしている(19歳~55歳調査)。中国人がもっとも熱心なネット・サーファーだが、同世代者は非就労時間の44%をインターネットにあてている。なおいずれの調査も、メールの時間は除いている。

 ネットというマルチメディアはコンテンツを断片化し、わたしたちが集中する力を低下させるといわれています。しかしネットの大量の情報は多岐にわたる。瞬時にたどり着くことができ、すごい魅力に溢れている。紙の本や雑誌は、このネットの魔力に打ち負かされている。
 アメリカの2008年読書調査では、紙の本や雑誌などの印刷物を読む時間は、週わずか49分。1日7分である(25歳~34歳)。14歳以上の平均的アメリカ人で週143分。1日20分ほどであった。

 リンクやサーフィンで気が散ってしまうネットではなく、落ち着いてじっくり、本なりの情報を「深く読むとき、われわれの脳のなかでは、豊かな結合が生じるのだが、これを生み出す能力が、オンラインでは大部分、停止したままになるのである」
 参考:ニコルス・G・カー著『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』2010年・青土社刊
<2010年9月19日>
コメント (9)
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