ふろむ播州山麓

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「南北統一」 Watch 北朝鮮2012年 3 

2012-01-06 | Weblog
 萩原遼さんが編集人をつとめる雑誌「光射せ!」。一般書店にはほとんど置いていないようですが、北朝鮮問題を考えるには格好の雑誌です。今回は同誌2011年7号(6月刊)8号(12月刊)などから、南北統一問題を取り上げてみます。

 まず山田麦氏(北朝鮮ウォッチャー)、7号からの記載ダイジェスト。
 半島の統一に必要なのは、韓国の対北朝鮮政策の変化よりも、むしろ北朝鮮が中国の影響下から脱して対南政策を転換し、「親韓国政策」を取ることであるが、これは中国が許すまい。さらには、周辺諸国が朝鮮半島の統一、それによって生じかねない北朝鮮の混乱によるリスクを恐れている点、北朝鮮の復興において資金面で多くを期待されていたであろう日本が震災で国力が弱ってしまっている現状など、マイナス要素が多く見られる。いま現在、緊張状態にある韓国と北朝鮮政府は、統一に向けた青写真をどのように描いているのかわからないが、交流も対話もないいまのままではかなわない。韓国は前政権と打って変って、アメリカ、日本寄りの政策を取り、北朝鮮は体制維持のために中国依存へとますます方向転換している。韓国の次期大統領は北に比較的融和的な人物になる可能性が高いが、時間が経つにつれ、大きな流れとしては北も南も統一よりは、現実的な路線を選び、体制安定、経済発展を図っていくのではないか。
 一番大きな負の要素は南北の同質性がこの七〇年間で失われてしまったという点である。もしかりに統一が実現する可能性があったとすれば、「古きよき日帝時代」という時間を共有していた民族の同質性が残り、中国の影響もずっと少なく、南北の国家体制の変遷を熟知していた金日成主席、金泳三大統領の首脳会談が予定されていた一九九四年の夏あたりが最後だったかな、と思う。
 いずれにしても、二〇一二年、とりわけ故金日成主席の誕生日である四月十五日(生誕100年)は、北朝鮮および東北アジア諸国にとって注目すべき一日になるのではなかろうか。

 鈴置高史著『朝鮮半島201Z年』について、萩原遼氏(ノンフィクション作家・現代朝鮮史家)は「光射せ!」7号で記しておられる。
 同書本文に、南北朝鮮統一を「韓国も北朝鮮もそれを本心では望んでおらず、中国にとっては『どうでもいいことだからだ』」とある。
 南北双方が統一を望んでいないというこの言葉は、私(萩原)も同じ意見である。私が朝鮮半島に関心をもった一九五〇年代末には「一日千秋の思いで統一を渇望している。それを妨げているのが米帝だ」という主張をおろかにも真に受けていた。これが真っ赤なウソだと知ったのは赤旗平壌特派員としてかの国に常駐するなかでだった。北の為政者は朝鮮分断でもっともうまい目を味わっていたのだ。一方韓国も統一が実現可能になったころ、つまりソ連の崩壊によって北がもっとも弱体化した一九九〇年初めのころから急に統一拒否症に変わった。いまではわずか二万人の脱北者の受け入れにもいい顔をしない。北からの脱北者も「南の同朋がこんなに冷たいとは思わなかった」と失望している。「北が今より多少よくなれば早く北に帰りたい」という人が少なくない。……
 いまさら統一などできる相談ではない。北の国民は言う。「自由に南に行けるときが来たら、南の連中をたたき殺してやりたい。おれたちがばたばた飢え死にしているときに、金正日政権にばかり支援したからだ」。また別の脱北者は「統一すれば南北の戦争になる」という。金大中、廬武鉉の二代続いた対北土下座外交がいかに北の人民の怒りをかきたてていることだろう。
 
 萩原氏は「かえすがえすも残念に思うのは、一九九四年七月の金日成主席と金泳三大統領の首脳会談が、金正日の妨害で雲散霧消したことである。あの時、金正日は父親(金日成)を殺してまで首脳会談を流産させた。あの時金日成は金正日に祭り上げられていたが、飢えた北国民の窮状をはじめて知り、南の援助でなんとか食わせようとして懸命になっていた。首脳会談で平壌に来る金泳三大統領の手土産は一00万トンの食糧と現金十億ドルといわれた。金日成はその金で火力発電所を多数建設して電気を生産し、肥料生産で農業を立てなおそうと真剣だった。周りの経済幹部たちもその気になっていた。南の支援で食糧増産となれば南北の対立も少しは解消され、和解へと進む大きなステップになったはずだった。金正日がすべてをぶち壊し、引き返せないかなたに国を持っていった。あれから二十年たつ。いまさら統一などできる相談ではない。……一九九四年の千載一遇のチャンスを逃した以上、もはや統一はない。南北双方がその気がなく、中国に仕切ってもらいたいというなら、それが次善の策だ。」

○参考・引用図書
『朝鮮半島201Z年』鈴置高史著 日本経済新聞出版社2010年刊(著者は日経新聞編集委員)
『金正日 隠された戦争―金日成の死と大量餓死の謎を解くー』萩原遼著 文藝春秋 2004年刊
『朝鮮学校「歴史教科書」を読む』萩原遼・井沢元彦共著 2011年 祥伝社
『光射せ! 北朝鮮収容所国家からの解放を目指す理論誌』年2回刊
 編集人:萩原遼 発行所:北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
 〒581-0868 大阪府八尾市西山本町7-6-5 3F
 TEL&FAX 072-990-2887 頒価900円 送料100円 既刊8冊
<2012年1月6日>
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