水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (54)音楽

2021年04月05日 00時00分00秒 | #小説

 人は疲れるとその疲れを取り除き、身体(からだ)を元気な状態に戻(もど)そうとする。その方法はいろいろとあるが、中でも心身の心の面を癒(いや)す方法の一つとして音楽がある。人によって多岐(たき)に好みの分野は分かれ、演歌の人もあればクラシック、ロック、ポップスといった人も存在する訳だ。なかには浪曲、民謡、詩吟といった古典好みの渋い方もおられることだろう。ただ一つ、共通するのは、それらの音楽を耳にすることによって疲れた心を癒す・・といった点だろう。^^ お肉が好きな方もおられれば、お魚が好きな方もおられる・・といった塩梅(あんばい)だ。あなたがお好きな音楽は何ですか? ^^
 とあるマンションの一室である。超有名な新進作家が朝から美味(うま)そうにステーキを頬張り、クラシック音楽を大音量で聴いている。
「どうも疲れるな…。こんなときは、このパターンが一番だっ!」
 誰に憚(はばか)ることなく、新進作家は大声で独りごちた。この新進作家にとって、疲れを取る方法は朝からステーキを頬張りクラシック音楽を大音量で聴くことだった。いや、そればかりではない。創作に行き詰ったときも新進作家はそうして凌(しの)いでいたのである。この日の場合は疲れだったが、お隣の住人の若い女性にすれば、いい迷惑だった。
「いやだっ! またぁ~~! ったくっ! 疲れるわっ!!」
 若い女性は、いつものように新建材の壁をコツン、コツン!! と強めに叩(たた)いた。それも毎回、同じ位置を、である。で、この日もそうした。
「チェッ! またかよっ! 疲れる音だっ!!」
 新進作家は仕方ないな…とばかり、愚痴りながらステレオのリモコン音量を小さくした。
「… これなら、まっ! いいか…」
 音量が下がったことで、お隣の若い女性は渋々(しぶしぶ)、妥協した。
「まっ! いいさ…」
 新進作家も同じように渋々、妥協した。
 このように音楽は、聴く内容や状況によって疲れる人もいれば、疲れが取れる人もいるから、妥協が必要となる。^^

                   完


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