水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (71)条件

2021年04月22日 00時00分00秒 | #小説

 疲れる条件を考えてみよう。まあ、人やそのときの場合によって違う・・と言ってしまえばそれまでだが、細かな違いはともかくとして、要は大まかな概略の違いである。^^
 とある官庁の残業風景である。例年ならこんなこともないな…と溜め息混じりに書類用の文書をPCで入力する男がいる。元居である。
「ああ…なんとかならないのかなぁ、ウイルスは…」
 そこへ同じ課の関川が後ろから声をかけた。
「お疲れっ! 俺、終ったから先に出るよっ!  いつもの店で待ってる!」
「ああ…」
 元居はPC画面に目を落としたまま、力なく返した。そして、『そういや、あの店も今週一杯で休業か…』と、ふと思った。『どうも最近は悪いことばかりが浮かぶ』と、続けて元居は思った。そのとき予期せぬいい発想が元居の脳裏に巡った。
『おお、そうだっ! 休業するはずだったが続けると、親父、前向きに言ってたな…』
 元居は一端、下げたテンションを回復させた。というのは、店の運転資金の貸し出し条件が緩和(かんわ)されたからだった。元居の残業による疲れる条件は消え去ったのである。
 条件がよくなれば、人は疲れることから解放されるのである。^^

                   完


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