水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (59)空(そら)

2021年04月10日 00時00分00秒 | #小説

 皆さんがお好きな空(そら)はどのような空だろう。晴れ渡った快晴の青空、暮れ泥(なず)むオレンジ色の空、まさか全天薄墨色の曇(どん)よりした空が好きっ! という方はおられないだろうが、人により空の好みはいろいろある訳だ。^^ その日が好みの空ならやる気も出るだろうし、心身に疲れるようなことがあっても、軽減させてくれるに違いない。私の場合は余り空模様には左右されないが、雨よりは晴れてくれた方が気分がいいのは確かだ。^^
 とある野原である。
「どうなんだろうな?」
 空を見上げながら草野球監督の豚崎(とんざき)がブブッ! と呟(つぶや)いた。
「まあ、今日がコレでしたから、多分、大丈夫じゃないですかっ?」
 コーチの牛岡(うしおか)はモオ~~っといい加減に返した。
「ったくっ! 試合の采配(さいはい)で疲れるなら分かるが、空模様で疲れるってのはどうなんだっ!?」
「そんなこと、私に訊(き)かれましても…」
「訊いた訳じゃないが、こう曖昧(あいまい)な空だと…」
「たぶん、降らないんじゃないですか? 今日はコレだったんですから…」
 牛岡が言ったコレとは、降りそうで降らず、試合が無事、終了したことを意味した。
「まっ! いいか…。降ったら降っただもんなっ!」
「そうですよ。カッパ着て、やりゃいい訳ですから…」
「カッパ着て野球はせんだろっ!?」
「はあ、それもそうですが…」
「やめだ、やめだっ! こんな話をしてるくらいなら美味(うま)い牛丼食ってる方がいいっ!」
「はいっ! それは言えますっ!」

 二人は空を見上げ続けて凝った首筋を揉みながら野原をあとにした。
 どんな空模様でも空は空なのだから、余り気にしない方がいいみたいだ。^^

                   完


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