水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (72)謎が謎を呼ぶ

2021年04月23日 00時00分00秒 | #小説

 謎が謎を呼べば疲れる。なぜかといえば、あ~~でもない、こう~~でもない…と推理を巡らし考えるからである。要は気疲れだ。^^ 考えなければ疲れることもないのだが、得てしてその方面の推理ドラマがお好きな方はお考えになり、結果としてお疲れになる・・といった寸法だ。^^
 とある普通家庭である。テレビがガナっている。テレビ前の座椅子を見れば、その家のご主人がテレビ画面に映る推理ドラマに見入っていた。するとそのとき、CMが急に流れ始め、ドラマは寸断されてしまったのである。丁度、ドラマが盛り上がる最高潮のクライマックスである。
「チェッ! いいところなのになっ!」 
 開口一番、ご主人は思いっきり愚痴った。そこへこの家の奥様が、現れなくてもいいのに現れた。^^ 奥さんとフツゥ~に書きたいところだが、山の神的な雰囲気からして奥様なのである。^^
「早く入って下さらないっ!!」
「んっ!? どこへ?」
「どこへって…もう!! お風呂に決まってるでしょ! ったくっ!!」
「あっ! そうそう…。そうだったな、すまんっ!」
「すまんはいいからっ! 私が入れないでしょ!! ったくっ!!」
「ああ、分かった…。今、謎が謎を呼ぶいいとこなのになぁ~~」
「あれだけ言ってたのに、あなたが忘れてた方が謎が謎を呼ぶわよっ! ったくっ!!」
 奥様は、ったくっ! を三度も繰り返した。
 謎が謎を呼ぶとき、他のことは忘れるようである。^^

                   完


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