水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (64)旅(たび)

2021年04月15日 00時00分00秒 | #小説

 楽しもうと行楽(こうらく)の旅(たび)に出た者が疲れて帰宅すれば、これはもう全然、話にならない。^^ 旅は心身の疲れを取り、リフレッシュするための行動なのである。疲れるための行動ではない。^^
 とある観光地のバス停へ一人の旅人(たびびと)が降り立った。
「まぼろし茸(だけ)って書いてあったな…。どんなキノコなんだっ?」
 呟(つぶや)きながら旅人はトボトボと歩き出した。すると、数分経ったところで一軒の古びた茅葺(かやぶき)の民家が見え始めた。旅人はその民家へと近づいた。入口の木戸は開いたままになっていた。
「あの…、ちと、お訊(たず)ねしますが…」
「はい…どなたじゃな?」
「旅の者です。まぼろし茸って書いてましたが?」
「ああ、アレはただのシイタケですじゃ、ははは…。最近は、この辺(あた)りも過疎(かそ)になりましてのう。観光客を呼びよります村興(むらおこ)しの手段ですじゃ!」
「ははは…なんだ、そうでしたか。しかしまあ、綺麗な空気が味わえただけで満足ですっ!」
「そげですかいのう。期待外(はず)れなことで、悪かことです」
「いやいや! そんなことは…」
 旅が期待外れだったとしても、何か新しいことを得れば疲れることはなくなる。^^

                   完


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