水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (69)お風呂(ふろ) 

2021年04月20日 00時00分00秒 | #小説

 疲れることか多いとき、ひとっ風呂(ぷろ)浴(あ)びれば、これはもう何とも言えぬいい心地(ここち)になるのは必然の理である。血行がよくなり、筋肉に蓄積した乳酸が分解されやすくなる・・というのが医学的な見方だが、決してそればかりではない。気分が寛(くつろ)げるというメリットも多分にあるのだ。風呂(ふろ)は風呂だけに風呂だけのことはある・・ということになる。^^
 疲れた身体を引き摺(ず)るように、とある一家のご主人が帰宅した。
「今、帰ったぞっ!! 風呂は沸(わ)いてるかぁ~~!」
「あらっ! 今日は早いわね…。いつも九時過ぎだから、まだ沸いてないわよっ!」
 玄関へ出てきた奥方が開口一番、ご主人をガッカリさせるようなひと言を投げた。
「そうか…。じゃあ、仕方ないな…。すぐに沸かせてくれっ! 夕飯にするっ!!」
 少しイラつきながら、ご主人は、『次のボーナスは絶対、自動湯沸かし器の工事だっ!』と決意した。自動湯沸かし器システムにすれば、浴槽にお湯を流し入れるだけで、いつでもすぐに入れるからである。そんなご主人の内心は露(つゆ)ほども知らず、奥方は、『次のボーナスは絶対、あの店の着物をっ!』と決意していた。ご主人の疲れなど眼中になかったことになる。
 結局のところ、疲れる身体には奥方の接待よりお風呂が一番っ! という結論に至る。^^

                   完


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