追うと追われるとでは、当然ながら気分が逆で、疲れる度合いも半端(はんぱ)なく違う。できれば、追われるより追いたいものだ。^^
とある官庁である。課長の睦月(むつき)が課長補佐の如月(きさらぎ)を呼びつけた。
「おいっ! アレはどうなっとるんだっ、如月君っ!」
「アレと申されますと…課長、なにでしょうか?」
「そうだっ! その、ナニだっ!」
「はっ! 残念ながらナニはまだ出来ておりません…」
「なにっ! アレだけアレを急げと言っとったじゃないかっ! アレをっ!」
「えっ!? アレじゃなく、ナニですよねっ!?」
「そうだ、ナニだっ! いつものことながら、仕事に追われるなあ、君はっ! 追われるんじゃなく追うんだっ!」
「はいっ! 追いますっ!」
「ったくっ! 美人の尻(しり)を追うのは得意な君がだっ! 頼んだよっ! 明日までだからなっ!」
「はい、明日までには、必ずっ!」
そのとき、係長の弥生(やよい)は何を思ったか、思わずニヤリとした。
そして次の日、疲れながら、まだ追われる如月の姿が課のデスクにあった。追うと追われるとでは、全然、疲れる度合いが違うのである。^^
完