水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (75)やり遂(と)げるっ!

2021年04月26日 00時00分00秒 | #小説

 何をするにも、やり遂(と)げるっ! と行動を続けるには、疲れるから相当な意気込みが必要となる。普通の場合は、まあ、食べてからでもいいか…などと中断することで、お釈迦さま[ダメ]になるケースが多い。手術の途中で中断し、患者さんを放っぽらかしてお店の美味(うま)い鰻重(うなじゅう)を頬張(ほおば)っていては、助かる命も助からないだろう。^^ 釈迦如来さまではダメで、疲れることを覚悟して、そこは薬師瑠璃光如来さまっ! と、いきたいものだ。^^
 緊急事態宣言が発せられ、七都府県は震撼(しんかん)していた。とある親子の会話である。
「どうなんだろうね…?」
「なにがだ…?」
「ウイルスのワクチン…」
「ワクチン? ああエビ…いや、あれは美味かった。…アビガンとか総理が仰(おっしゃ)ってたな…」
「そう! 出る弟子…違った! デフデシベル? とかの話も出てたよっ!」
「ああ、孰(いず)れにしろ、一過性(いっかせい)だなっ!」
「一家性(いっかせい)?」
「ああ、一過性。今回は終息したとしてだ。それに打ち勝つ抗ウイルスが出てきたらどうするんだっ! 耐性菌っ!」
「耐性菌っ!?」
「ああ、耐性菌。完全な一件落着じゃないだろっ!」
「医学の研究開発にかかってる訳だ…」
「発想の転換が必要になるんじゃないかっ…」
「発想の転換!?」
「ああ、発想の転換! 抑(おさ)えるってのはなっ! 死滅させなきゃ!」
「疲れる研究だねっ!?」
「ああ、疲れる研究だが、頑張ってもらわんとなっ!」
「そうだねっ!」
 二人は疲れる会話をやめ、熱い茶を啜(すす)りながら店屋物(てんやもの)の特上鰻重(うなじゅう)を頬張(ほおば)った。
 疲れることにスタミナは欠かせない。^^


                   完


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