水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (96)理(り)

2022年03月12日 00時00分00秒 | #小説

 理(り)が無ければ無理となる。無理なことをしても成就(じょうじゅ)せず、心は暗くなるばかりだ。ということは、成そうとする行為に理があるかどうかを、冷静に見極める力が必要となる。そうすればコトは首尾よく運び、明るい結果が展望できる訳である。軍師、参謀・・などといったお偉(えら)い方々は、その先見性の能力に長(た)けている方々だろう。私なんか、さっぱりだ。^^
 とある町に住む、その日暮らしの鶉(うずら)も、時々の行動に理があるかどうかを探りながら日夜、暮らしている男だった。会社にリストラされ、もう彼是、二十年以上が過ぎていた。そうなれば、生活をやっていけるコツといったようなものが自(おの)ずと鶉の頭脳に備わってくる。その潜在能力は進化と呼べるものだった。
『待てよ…ナニはアレになりそうだから無理だな。ならば、コレでいけば理が有るかも知れん…』
 鶉は、こうして日々を暮らしていたのである。そんなことで失敗が少なくなるにつれ、自然と気分が明るくなった。
 そして、その日もコトは順調に推移し、失敗は自然と未然に防(ふせ)がれた。^^
『よしよし…』
 鶉は明るい気分で、浴室のシャワーを弄(いじ)りながらそう思った。思った途端、シャンプーを切らしていたことに、気づいた。鶉の気分は暗くなった。鶉が洗髪を続けることに理はなかった。
 理の継続には油断が禁物で、明るい気分でも暗く変化しやすいですから、呉々(くれぐれ)もご注意をっ!^^

                   完


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