…AかBか? どちらかを選択しなければならない場合を二者択一(にしゃたくいつ)という。略して、二択(にたく)である。明るく笑いながら、どちらでもいいだろっ? などと言ってられるお人は気楽で、まだ救いもある。ところが、いやいやいや、やはりAか…いや、待てよっ! Bも捨てがたいっ! などと深刻に考え込まねばならないと、これはもう、テンションはダダ落ちで暗くなる。しかも踏ん切りがつかず、刻々と時間を消費するから最悪だ。
この男、蕗崎(ふきざき)も二択で暗く思い悩んでいた。かれこれ小一時間が過ぎようとしていたが、いっこうに結論が出ない。
「ええいっ! 誰か決めてくれっ!」
ついに蕗崎は二択の結論が出ず、叫んでいた。
「ど、どうしたんですっ!? お父さんっ!」
蕗崎の大声に驚いた妻の鍋子がキッチンから飛んできた。
「いや…いいんだっ!」
バツが悪く、蕗崎は誤魔化して暈(ぼか)した。ただ、その内心は、まだ二択中だった。蕗崎が悩んでいる二択は、次の出張先のホテルをAにするか? Bにするか?
だった。そして蕗崎が出した最終解答[ファイナル・アンサー]は? Cホテルだった。^^ 蕗崎はようやく暗い顔から抜け出し、雲間から太陽が顔を出すかのように明るく笑った。二択から抜け出られたのである。
二択は結論が出なければ気分が暗く、出れば明るくなるのである。^^
完