風とひと言(こと)でいっても、いい風と、どうしようもない悪い風の両方がある。両者は、私達には見えず鬩(せめ)ぎ合っている。鬩ぎ合う二つの風は、私達には分からない壮烈なバトル[戦闘]を繰り返している訳である。いい風が勝てば雲を吹き飛ばして晴れるから、人々は明るい気分になることだろう。負ければ全天、薄墨色に染まり、やがて風雨となる。最悪の場合、暴風雨となり、人々を苦しめ、暗くする。まあまあ、私に免じて…などと思っても、アンタの顔を立てて・・と矛(ほこ)を収(おさ)める悪い風はいないだろうが…。^^
とある天空で、悪い風といい風が鬩ぎ合っている。両者の格闘は数日に渡って続き、すでに両者ともヘトヘトだ。
『ヒィ~フゥ~ …もう、やめないか?』
片方のいい風がヒィ~フゥ~と弱く吹く。
『だな…。 すっかり疲れっちまったよっ! フゥ~ヒィ~』
もう片方の悪い風が同調し、フゥ~ヒィ~と弱く吹き返す。二つの風は痛み分けした格好で、別方向へと撤収を開始する。下界では、そんなこととは気づかない愚かな人間が、馬鹿のように口を開け、暗かった顔から明るく間抜けした顔へと変化させ、空を見上げる。^^
風は、人を明るくも暗くもする訳である。^^
完