水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (97)見透(みとお)し

2022年03月13日 00時00分00秒 | #小説

 見透し・・この言葉は、ただ単に表面を見通すのではなく、奥底までスキャンして見透すことを意味する。漢字が違うだけで同じじゃないかっ! とお怒りの方もおられようが、ここはひとつ、ひな祭りの甘酒でも飲んでいただいて、ご容赦をお願いしたい。甘いものがダメな方々は、適当に飲み食いして下さい。ただし、あなた方がグデングデンに酔おうと、当方は一切、責任を持てないのでそのつもりで…。このご注意は、自動的に消滅します。^^
 先の見透しが効けば、これはもう気分が明るくなる。なんといっても、先々のアアナル、コウナルが分かっているからだ。未来が分かれば、手の打ちようもあろうというものだ。この男、金崎(かねざき)も、とある私的情報機関を利用し、先の見透しが分かる男だった。
「なにっ! 亜才(あさい)グループが阿桜(あさくら)ホールディングスの傘下に入った、だとっ!! それは本当かっ!」
 明るい気分で秘書の淹(い)れたブルーマウンテンを味わっていた尾駄(おだ)会長は、俄(にわ)かに暗い顔になった。
「はっ! 機関の情報は間違いのない事実かと考えられます…」
 会長付専務の志旗(しばた)は低姿勢で尾駄に進言した。
「あれだけ硬い約定を交わしておきながら…。おのれっ、亜才っ!!」
「会長っ! 如何(いかが)いたしましょうっ!?」
「イカがも、タコがもないわっ!! ここは、ひとまず撤収じゃぁ~~!!」
「と、申されますとっ!?」
「亜才グループに放った執行役員達を、すべて本社へ戻(もど)せ、と申しておるのだっ!」
「ははっ! ただちに役員会にてそのように…」
「頼んだぞっ、志旗っ!!」
「ははぁ~~~!!」
「わしは、ひとまず、隠居じゃ隠居っ! さらばっ!」
 尾駄会長は会長室を出ると、屋上に常時、待機させている会長専用機のヘリコプターに飛び乗り、秘書室長の欄間(らんま)の先導で保養地の別荘へ明るく飛び立った。
 こういうこともあろうかと…という明るい先の見透しを用意周到に準備しておけば、暗い失着はない訳である。^^

                   完


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