水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (99)ブービー

2022年03月15日 00時00分00秒 | #小説

 ブービーという言葉がある。最下位より一つ上のランクを意味する和製英語だ。日本風に分かりやすく言えば、お尻(しり)より二番目っ! ということである。^^ 結果が最悪で暗いにもかかわらず、どういう訳か賞が頂戴でき、明るい気分になる不思議なランクだ。
 とある町役場である。、この男、職員の蕗川(ふきかわ)も、どういう訳かブービーが多い男だった。上司の仕事の評価も悪く、そうかといって同じ課で最悪の土筆(つくし)よりは、いつも少し出来がいい評価だった。課ではブービーさんで通っていた。
「あっ! ブービー君、ちょっと!!」
 課長の猪豚(いのぶた)に呼ばれた蕗川は課長席へと歩んだ。
「君に頼んだアレは出来てるかい!?」
「アレというと、ナニですねっ?」
「そう! そのナニだよ」
「ナニは出来ました。今、土筆さんに仕上げをしてもらっています」
「ああ、そうか…。おいっ! 土筆君っ!」
「はいっ!! 何でしょう、課長!?」
「ナニは出来てるかいっ!!?」
「えっ!? ナニというとアレですかっ!?」
「そう、アレだっ! いや、そうじゃない、ナニだっ! …んっ? どっちなんだ!? もういいっ、ナニでもアレでもっ! とにかく出来てるかっ!!」
「出来てません…」
 蕗川はニタリと明るく笑った。蕗川は、やはり最後に笑えるブービー男だったのである。^^

                   完


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