水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (91)機械

2022年03月07日 00時00分00秒 | #小説

 朝早くから病院に出向いた御手洗(みたらし)は、甘く蕩(とろ)けそうな目を擦(こす)りながら病院の門を潜(くぐ)った。そしてすぐに血圧測定器に一直線に進み、測定器の椅子に座ると片腕を機械に通して徐(おもむろ)に測定を始めた。電子音がブブ~~と小さくすると、しばらくして測定結果の紙が出てきた。
『ええっ!! 170の95!』
 御手洗は思わず心で唸(うな)った。昨夜、家で測ったときは120の73だったのである。数値の相当な違いは何故(なぜ)なのか? …と御手洗は巡った。ふと、思いついたのは、歩いてすぐに測った…という理由だった。それにしても高過ぎる…と御手洗は、また巡った。その後、二度、三度と測り直したが、やはり170云々(うんぬん)である。家の機械と病院の機械は異質なのか…と、御手洗は、またまた巡った。まあ、いいか…と思い直し、五分ばかり経ったあと、ふたたび御手洗は測り直した。すると、ようやく数値が150台に下がっていた。それにしても、30ばかり高い。御手洗は明るかった気分が暗くなった。このまま気分が暗いというのも、いかがなものか? という思いが御手洗に浮かんだ。
 機械との相性が悪いと、人為的ミスを除(のぞ)いて、気分が暗くなる訳である。^^

                   完


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