10年以上前になりますが、「日本精神が広がっている」と書いたのは、『ロンドン・エコノミスト』である。
今、「ロンドン」が取れて、ただの『エコノミスト』という誌名になっているが、こんなことを書いていた。“ジョージ・ソロス(ユダヤ系アメリカ人の投資家・投機家)にいたぶられてアジアのビジネスマンはみんなアメリカを見るようになったが、しかしアジアの子供は全部、日本を見ている。日本に憧れ、日本を一日でも早く取り入れたいと思っている。心の中はもう日本人になっている”。
その後が面白いが、日本は国境の外に日本精神文化圏をもう持っている。アジアがそうだ・・・・と書いてある。私は、「いやいや。アメリカだって、イギリスだってすでに日本精神文化圏だ。子供はみんなそうだ。大人が知らないだけだ」と思っていたが、それはともかく『エコノミスト』が続けて「これは日本に大変な利益をもたらす。外交上、防衛上、日本シンパが国境の外にたくさんいるという利益は大変なものである」と書いたのは、さすがイギリス人だと感心した。
実はイギリスこそ、そういう利益を満喫してきた国である。イギリス文化礼賛、イギリス文明礼賛を世界中に広げて大成功した。それを日本がやり出すとは生意気だ、これは注目すべき大事件である、と思ったのだろう。
そして、『エコノミスト』はその後に、「アジア中が日本若者文化の海賊版だらけである。海賊版をアメリカ人は退治しようとするが、日本人は退治しない。日本文化が好きになって、広まってくれれば嬉しいと考えて、宣伝になるからと日本の会社はまったく裁判を起こさない。不思議なことである」と書いてある。
ちょうど、同じころアメリカの『ビジネスウィーク』誌はこう書いていた。「日本はマンガ・アニメでアメリカから金を取っていく。ポケモングッズとか、ピカチュウグッズでいたいけないアメリカの子供の小遣いを奪っていく。この産業上の利益は莫大なものである。
これに対抗すべきディズニーはいったい何をしているのか。ディズニーにはもうクリエイティブな能力はないらしい」と書いた。ロサンゼルスの映画館で『もののけ姫』を見ている女性が「アメリカにはもう娯楽の創造能力はなくなったのではあるまいか」と語ったと書いて、アメリカの『ビジネスウィーク』はその記事を終わるのである。
このようにアメリカは産業利益だけを見ているが、イギリスは文化と精神を見ている。そして『エコノミスト』はこう書いて記事を終わる。「日本は裁判を起こさないが、今やアジアの若者のほうが変わった。経済が発展して豊かになると、やはりホンモノが欲しくなり、高い日本製のオリジナルを買うようになった」と。これは文化の勝利を見た意見で、アジアの若者は日本文化の品質を分かるようになったと言っているのである。
日本のマンガ・アニメには大きな特徴がある。ところが、灯台もと暗しで、かえって日本人には分からない。カラオケ、寿司、和服、庭園と同じで、やりたいことをやっているだけだから当然だが、しかし、この頃は外国人がマンガ・アニメを見てそんな話をする。
日本のマンガ・アニメには日本の精神文化が息づいているのである。
---owari---
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