今回のシリーズは、武田信玄(第2弾)です。
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晴信(のちの信玄)は景虎(のちの上杉謙信)とはちがい、実利を重んじる性格であった。
彼は他国への侵略をはじめるまえに、謀略をかさね、敵の重臣を寝返らせる。家中の士には勝利の暁に手厚い恩賞を与えると約束する。
勝ちを得たときには約束を実行する。
晴信は家来に実利を与えることによって、士気を奮起した。彼は戦略に熟達し、合戦に際し、再起を望めないほどの打撃を与えることはなかった。
信濃攻略にあたっても、降伏した小領主は許して先手衆として用いる。戦功をたてた場合は征服した相手の所領を分け与えた。
大勢力である小笠原、村上らは討滅(とうめつ:うちほろぼす)する方針を変えない。
彼は孫子の兵法を実戦に活用した。
長尾景虎(謙信)との戦いに及んでも、その鋭鋒(えいほう:鋭く攻めたてること)をいったんは避けて退却し、機を見てふたたび進出する硬軟両様の作戦を用いていた。
景虎上洛の留守中、晴信は信濃の占領地域の地侍を懐柔し、調略を用いて北信濃征服の手筈(てはず)をととのえている。
(『武田信玄 上』作家・津本陽より抜粋)
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