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中学生たちは八田與一の物語で心を磨いた ~ 歴人(歴史人物学習館)便り(3)(前編)

2024年02月01日 | 歴史
台湾の人々と力を合わせて、戦前、東洋一のダムを作りあげた八田與一(はったよいち)の物語は歴史教育だけでなく、道徳教育にも有用。

(「小学校1年生に道徳の時間で八田與一を教えている」!)
「小学校1年生に道徳の時間で八田與一を教えている」と、小学校教師から聞いた時、心底、驚きました。八田與一は戦前の台湾で東洋一の巨大ダムを作り、「100万人ほどの農家の暮らしを豊かにしたひと」(李登輝・元台湾総統)です。その人物の話を聞いて、小学校1年生でも「すごい人がいたんだ!」と感動するそうです。

小学1年生に八田與一の凄さが分かるとは、思いもよりませんでした。しかし、歴史はまだ習っていなくとも、人物が織りなすドラマは小学1年生でも分かります。歴史人物学習は、道徳にも効果的なのですね。

今回、歴史人物学習館の「第3回感想文祭り」として、横須賀市の中学3年生140人が八田與一のページでお勧め動画/記事を視聴し[八田]、感想文を書きました。うち28編を優秀作品として歴史人物学習館の感想文ページで公開しました[感想]。これらを読むと、確かに八田與一の物語は歴史学習だけではなく、道徳教材としても優れたものであることがよく分かりました。

なお、この28名に優秀賞として表彰状と500円図書カードを贈呈しました。図書カードの費用は、賛助会員として3千円/年をお納めいただいた中から支出しています。皆様のお志が、次世代の日本国民の育成に、このように役立っています。まだ、賛助会員のお申込をいただいていない方には、ぜひご参加、ご助力をお願い申し上げます。

歴史人物学習館 賛助会員申込み => https://rekijin.net/sanjyo_kaiin/

(「支えあえる人との信頼が苦難を乗り越え、偉大なことを成し遂げる」)
まず、中学生たちが最も感動したのは、東洋一のダムを作るという偉業は八田與一と台湾の人々の間に良き信頼関係があったからできた、という点です。

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台湾の人々は八田與一さんが考える以上に八田與一さんのことを信頼し、ダムを完成させると思っていたのです。今までは八田與一さんが引っ張っていると思っていましたが、今度は台湾の人々が八田與一さんを引っ張ったところを見て、お互いは対等の立場で信頼し合っているんだと気づきました。
支えあえる人との信頼が苦難を乗り越え、偉大なことを成し遂げると私は学びました。(女子)
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ダム建設の最中には、トンネル掘削中に石油ガスが噴出して爆発し、50人もの作業者が亡くなるという事故もありました。この事故で、次のような感想を持った生徒もいます。
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建設から2年目で起こった石油ガスの爆発事故では計五十人の作業員が亡くなられました。それを知った時、私は他に働いてる人たちはこれを機にやめてしまうのではないかと思いました。ですが、実際にやめてしまいたいと思ったのは八田さんだけであり、逆に働いている人々は将来の台湾の為に作業を続けたいと言っていたそうです。
死者が出るほど危険で大変な作業を続けたいと思わせてくれた八田さんは、台湾に愛された日本人という名が最もふさわしい人物だと思いました。(女子)
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石油ガスによる爆発事故は本当に不幸だったとしか言えません。八田さんが工事を辞めたいといったときの気持ちはすごく理解できます。しかし、遺族の方の言葉に励まされ、「君たちの死をオレは絶対に無駄にはしない」と言った八田さんの言葉には、胸を打たれました。
その後、月日が経ち、東日本大震災が起こった際には台湾が真っ先に日本へ駆けつけ、支援してくれたことは本当に感動しました。これらも含め、八田さんの活躍があったからだと思います。(女子)
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困難を乗り越えるためには、人々との信頼と協力がいかに大切か、ということを、八田與一の物語は史実を通じて語っているのです。

(「この人は人々のダムだ」)
数千人の農民と力を合わせる、これだけの人間が一つになって力を合わせる様を、こんなふうに表現した生徒もいました。

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私は八田與一という人のことを調べてみて、この人は人々のダムだと思いました。
私はダムの水のようにバラバラなところにいた多くの人々を與一は水を出し入れするかのように動かし、水を発電に使うかのように上手く能力を活用してできたのが、このダムだと思いました。(女子)
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さらに、東洋一のダムは、八田與一の生き様そのものだ、と語る生徒もいます。
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「八田與一」彼の生き方がとても美しいと思う。強い信念を持ち、個々を大切な存在として扱った。平等に、対等に、真摯に向き合ったからこそ、東洋一とも言われる巨大ダムが完成したのだと思う。私はそのダムこそが彼の生き様であり、台湾の人々との絆でもあると思った。そしてその絆は今も続いている。(女子)
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(「仲間のこと、家族のことを大切に思っているからこそ台湾の人々も八田さんを信じてついてきてくれてた」)
八田與一が、台湾の人々との強い信頼関係をいかに築いたかについて、何人もの生徒が感想を書いてくれました。
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現場に住み込みで働き、作業員そして家族二千人が住めるよう学校や病院まで作るという行動力にとても驚きました。また八田さんは自分の子供達を台湾の子供達と一緒に学校に通わせるなど、台湾の人々との人間関係を大切にしていた事がよくわかりました。このような八田さんの行動は台湾の未来を変えたと言っても過言ではないと思いました。(女子)
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まず私が驚いたのは與一さんの「よい仕事は安心して働ける環境から生まれる」という考えから、宿舎だけでなく、学校や病院など、豊かな畑を超えて豊かな町づくりへと目標が大きくなり、実際に作り上げてしまっているということです。
與一さんはいまもなお誰かの記憶にあり、(注:蒋介石政権により)日本人の銅像が回収されていく中、人々に守られていました。これは與一さんがダムを作ったからではなく、台湾人たちに寄り添った結果だと感じました。(男子)
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八田さんは東洋一の巨大なダムを作り、台湾を生まれ変わらせました。そして今もなお、台湾の人々から尊敬され、台湾と日本を繋いでくれています。私はそんな偉業を成し遂げられたのは八田與一さんの考え方に理由があると思います。
八田さんが残した言葉を見ると、仲間のこと、家族のことを大切に思っていることが分かります。そんな八田さんだからこそ台湾の人々も八田さんを信じてついてきてくれてダム作りを成功させることができたと分かりました。(女子)
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こうした八田與一の姿勢は、台湾の人々の間に、「感謝し合う」関係を築きました。ある生徒は、こう語っています。
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感謝し「合う」ということの大切さを、私は八田與一さんから学びました。
八田與一さんは自分に協力し、自分のもとで働いてくれる労働者に感謝していました。そしてその感謝から、労働者にとって安心して働くことのできる環境をつくったのだと思います。また、労働者たちもそんな八田與一さんに感謝をしていたからこそ、厳しい環境の中で最後まで協力したのだと思います。人と関係を築いていく上ではお互いがお互いに感謝をすることが大切です。(女子)
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仲間を大切にしてこそ、相手も応えてくれる、互いに感謝し合える関係も作れる。その結果、大きな偉業も残せる。これはまさに道徳の徳目です。

---owari---
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