今日もフランスの作家、オリヴィエ・ジェルマントマの著書「日本待望論」よりお伝えします。
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目下衰運に見舞われているとはいえ、現存する世界最古の文化の一つの相続者である日本民族は、地球的規模において脅(おびや)かされつつあるアイデンティティの擁護者として、まさに打ってつけです。政治的経済的理由からして、アジアでは、アイデンティティの崩壊は他のどこよりも目を覆うばかりのものとなっています。
タイでは、拙速なる発展ラッシュが醇風美俗(じゅんぷうびぞく:人情に厚く美しい生活態度,風俗習慣)を踏みにじって進行中であり、明日はビルマ(現ミャンマー)も、幾分は控え目ながら、同じ不幸の轍(てつ)を踏むことでしょう。
ベトナムでも、カンボジアでも、戦争と独裁者と民族大虐殺(ジェノサイド)が、アイデンティティに対して戦慄的打撃をもたらしました。チベットに至っては、その状況は、中国の仕業によって、国際的良心にとって恥辱(ちじょく)という以外の何物でもありません。人類の未来にかけがえのない、このユニークなチベット文化がみすみす消えていくのを、人々は何も言わずに見過ごすつもりなのでしょうか。
これらのケースにおいても、そのほかのケースにおいても、日本は、建築・舞踊・言語などの文化財保護のために大きな役割を果たしうるのです。それはまた、日本が政治面においても役割を果たす絶好の機会となるでありましょう。
アイデンティティの保持にこそ人類文明の存続はかかっているのだということを、高く、強く、日本は訴えるべきなのです。現時点においては、日本をはじめヨーロッパのニ、三の国だけが、いかに文化財が国際社会の団結の上において必要であるかを心底から理解する力と経験を持っているのですから。
---owari---
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