自動車・家電、マンガ、アニメなど"Japan Cool"が世界の子どもや大人たちに愛されている。
(『世界の日本人ジョーク集』)
『世界の日本人ジョーク集』が100万部に達しそうな勢いで、ベストセラーになっている。その帯には、こんなジョークが紹介されている。
ある豪華客船が航海の最中に沈みだした。船長は乗客たちに速やかに船から脱出して海に飛び込むように、指示しなければならなかった。
船長は、それぞれの外国人乗客にこう言った。
アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄ですよ」
イギリス人には「飛び込めばあなたは紳士です」
ドイツ人には「飛び込むのがこの船の規則となっています」
イタリア人には「飛び込むと女性にもてますよ」
フランス人には「飛び込まないでください」
日本人には「みんな飛び込んでますよ」
各国の国民性を端的に表した傑作ジョークである。この本の中には、こうした日本人の民族性をからかったジョークが満載されているのかと思いきや、日本人の勤勉さやハイテクぶりを引き合いに出して、他民族をからかったジョークの方が多かったのは意外であった。そして、それを解説する著者・早坂隆氏の豊富な海外体験が説得力を与えている。そんな新鮮さが、ベストセラーとなった一因でもあろう。
(技術者の違い)
たとえば、こんなジョークがある。
日本人とロシア人の技術者が、クルマの機密性について話し合っていた。
日本人の技術者の話。
「わが国では気密性を試すためには、猫を一晩クルマの中にいれておきます。そして次の日に、猫が窒息していたら、気密性は十分だと判断します」
ロシア人技術者の話。
「わが国でも、気密性を試すために、猫を一晩クルマの中に入れておきます。そして次の日に、猫がクルマの中にいれば、気密性は十分だと判断します」
これなどもジョークの対象はロシア人である。日本人の方は、そのための「枕」になっている。それだけ日本の技術の優秀性は、ごく当たり前の事として受けとめられているのである。
(サラエボの「TOYOTA」と日の丸)
このジョークの後で早坂氏の語る次のエピソードが心に残る。
2001年に氏がボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボを取材した時のこと、長いボスニア内戦で傷ついた街並みは、多くの国々の援助によって、ようやく復興を始めていた。
街には各国から集まった治安維持部隊の兵士たちが溢れていたが、日本は人的貢献が十分でなく、日本人の姿は見えなかった。しかし、人の代わりにクルマが日本の存在感を示していた。
一つは国連の使っている自動車がすべてトヨタの四輪駆動車であったこと。「TOYOTA」のマークは、国連の「UN」よりもずっと目立っていた。
もう一つは、サラエボ市内を走る新型の大型バス。日本のODA(政府開発援助)により購入されたもので、すべての車体に日の丸と「JAPAN」の文字が入っていた。これがサラエボ市民の貴重な足となっており、早坂氏は市民の一人からこう声をかけられた。「君は日本人かい? あのバスありがとうな。本当に助かっているよ」
(青いキリン)
自動車に限らず、日本のハイテクぶりはすでに世界の常識になっているようだ。
ある酔狂な大富豪が言った。「もしも青いキリンを私に見せてくれるなら、莫大な賞金を出そう」
それを聞いたそれぞれの国の人たちはこんな行動をとった。
イギリス人は、そんな生物が本当にいるのかどうか、徹底的に議論を重ねた。
ドイツ人は、そんな生物が本当にいるのかどうか、図書館へ行って文献を調べた。
アメリカ人は、軍を出動させ、世界中に派遣して探し回った。
日本人は、品種改良の研究を昼夜を問わず重ねて、青いキリンを作った。
中国人は青いペンキを買いにいった。
ここでも、日本人は、イギリス人、ドイツ人、アメリカ人と並んで中国人のイカサマぶりを際だたせるための脇役だ。しかも脇役の中でも、真面目な技術者として描かれている。
(「僕のベッドはソニー製」)
こんなジョークが自然に語られるほど、日本のハイテクぶりは世界の一般庶民にまで浸透している。それは車や家電製品など、日常生活の中で日本製品の優秀さを体験しているからだろう。
早坂氏はこんな経験をしている。
ルーマニアの首都ブカレストには、2002年くらいまで、マンホールで暮らしている子どもたちが多くいた。一般的に「チャウシェスクの子どもたち」と呼ばれた彼らの多くは路上生活を続けていたが、寒い冬には暖をとるためにマンホールの中へと潜った。マンホールの中はいつも異臭に満ち溢れていた。
そんな子どもたちの中で、一人の男の子が、寝床に敷いてあった段ボールを掲げて見せてくれたことがあった。何だろうと思い、暗闇の中で目を凝らすと、そこには「SONY」の文字。「どうだい。僕のベッドはソニー製さ。凄いだろう」。マンホールチルドレンのあいだにも、「日本=最先端技術の国」というイメージがしっかり存在していた。
これはジョークというよりも、悲しい現実である。私もルーマニアの地方都市に行ったことがあるが、そこで泊まったホテルは、かつてチャウシェスク大統領夫妻も泊まったという、その都市の最高級のものであった。それでも暗く煤けた建物で、エレベーターもギーギーと音を立てながら動く代物だった。ようやく目的の階についてドアが開くと、床との差が5センチもあって、あやうく転びそうになった。
豊かで広大な国土を持つルーマニアは、まっとうな経済を営んでいれば、恵まれた生活を送れるはずなのに、共産主義独裁政権に搾取されて、こんな貧しい遅れた国になってしまったのか、とその時しみじみ思ったことである。
今頃は、日系企業も含め多くの外国企業が進出して、国も徐々に豊かになり、このようなマンホール・チルドレンも普通のベッドに寝られるようになっただろうか。SONY製ではなくとも。
---owari---
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