自動車・家電、マンガ、アニメなど"Japan Cool"が世界の子どもや大人たちに愛されている。
(「日本人は世界一勤勉だと聞いていたから期待していたのに」)
日本人が素晴らしい自動車や家電製品を作れる理由として、世界の人々は、やはり勤勉さがその原動力だと考える。
日本人とフランス人が逮捕され、懲役20年という刑が下された。ひどく落胆した様子の二人に、刑務官が言った。「特別に10年ごとに一つだけ何でも望みを叶えてやろう。それでは、最初の10年のために欲しいものは何だ?」
日本人は1000冊の本を頼んだ。フランス人は1000本のワインを頼んだ。
それから10年が経ち、再び刑務官がやって来た。刑務官は次の10年のために何が欲しいのかを尋ねた。
日本人はまた1000冊の本を頼んだ。フランス人は栓抜きを頼んだ。
享楽的で間抜けな人間に描かれたフランス人が主人公で、勤勉な日本人がやはり脇役だが、ちょっと格好良すぎる気もする。
早坂氏が、ルーマニアでブドウの収穫を手伝った時のこと。
最初は物珍しく楽しく手伝っていたが、ルーマニア人たちが黙々と作業を続ける中で、最初に飽きてしまった。畑の横に座って休んでいると、こんな言葉が冗談混じりに投げかけられた。
「なんだ、おかしいな。日本人は世界一勤勉だと聞いていたから期待していたのに、最初に日本人がサボり出したぞ。これじゃどっちが日本人かわからないな」
(「日本人のあなたにはぜひ愚痴を言っておきたいわ」)
自動車や家電製品などのハードばかりでなく、最近ではマンガやテレビ番組など、日本のソフトも世界に広がりつつある。
早坂氏はこんな体験をしている。
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボで、ある家庭に招かれた時のこと。その家には上は10歳から、下は2歳までの4人の子どもたちがいたのだが、その子ども部屋はカラフルなポケモン・グッズで埋め尽くされていた。母親は苦笑しながら、「日本人のあなたにはぜひ愚痴を言っておきたいわ。『ポケモン』のせいで、グッズをせがまれるわ、テレビを観せないと大泣きするわ、毎日大変なのよ。まったく困ったものよ」。
言葉とは裏腹に、母親の顔には平和と幸福を取り戻したサラエボ市民の安堵の色が見て取れた。一万人以上と言われる死者を出したサラエボ市民が、やっと手にしたかけがえのない平和な日々の中に、日本のアニメも存在していた。
こうした子どもたちの姿はアメリカでも同じようだ。
トムが子どもたちを連れてウォルト・ディスニー・ワールドへと行った。子どもたちは、”夢のテーマパーク”で遊ぶのを楽しみにしており、前日は興奮で夜も眠れないほどだったのである。
しかし、当日、子どもたちの顔に笑顔はなかった。なぜなら、子どもたちが最も会いたがっていた「ポケモン」の姿が、いくら探しても見あたらなかったからである。
(「あなたは日本人ですか? もしかしてナゴヤ出身?」)
マンガが子どもにとっての世界共通語なら、大人にとってのそれはスポーツだろう。
早坂氏がユーゴスラビア連邦(当時)の首都ベオグラードを訪れた時、住民の大半を占めるセルビア人に「あなたは日本人ですか? もしかしてナゴヤ出身?」と頻繁に聞かれた。氏が頷くと、彼らは一様に大いに喜ぶのであった。そしてこう叫ぶ。
「ナゴヤ、ストイコビッチ! グランパス! ナンバーワン!」
日本のJリーグ、名古屋グランパスエイトで活躍したドラガン・ストイコビッチは世界的に知られる名プレーヤーであり、セルビア人たちの英雄なのであった。
そのストイコビッチの引退試合が、2001年10月、豊田スタジアムで開かれた。彼がユーゴスラビア時代に在籍していたベオグラード・レッドスターと、在日中に所属した名古屋グランパスエイトという粋な対戦である。その試合を、早坂氏はベオグラードでテレビ観戦した。
バーに置かれたテレビのブラウン管では、グランパスエイトの赤とオレンジのユニフォームに袖を通したストイコビッチが、満員の豊田スタジアムの客席に笑顔で手を振っている姿が映し出されていた。バーを埋め尽くしたベオグラードの人たちは、日本人である私を見つけると、満面の笑顔と共に近寄ってきて、堅い握手と抱擁を求めてくるのであった。私はセルビア語をほとんどわからないが、それでも十分であった。彼らの中にはテレビを観ながら、本当に涙ぐんでいる人もいるほどだった。
(「僕はアメリカに生まれて本当に良かった」)
自動車や家電製品、マンガやスポーツで、日本は世界の子どもたちや大人たちに幸福を提供している。次の「あるアメリカの子どもの幸福な休日」が、それを端的に示している。
待ちに待った日曜日。今日は学校も休みだ。いつもより遅く起きた僕は、まずソニー製のテレビのスイッチを入れる。毎週楽しみにしている日本のアニメを観るためだ。それが終わると、マンガを読む。でも、今日はゆっくり読んでいられない。パパとハロウィンの衣装を買いに行くためだ。
パパ自慢のトヨタに乗り、ショッピング・センターへと向かう。カーラジオからはイチローがまたヒットを打って新記録を作ったというニュース。いったい何度目の新記録?
買って貰ったのはポケモンの着ぐるみ。これで人気間違いなしだ。それにクリスマスに欲しい新しいニンテンドーのソフトもしっかりチェックしておいた。でも、プリンセス・テンコーのフィギュアも欲しいんだけど。
ランチのおいしいスシを食べてから家に帰った。僕はまたマンガの続きを読む。パパはトヨタを洗い出した。これから、前から観たいと言っていた『ラスト・サムライ』を観るためにママと一緒に映画館に行くらしい。
お兄ちゃんは、ホンダのバイクでガールフレンドの家にでも向かったようだ。夕方にあるカラテの練習まではデートでもするのだろう。
僕は思う。アメリカとはなんて豊かな、いい国だろうって。僕はアメリカに生まれて本当に良かった。僕はアメリカを心から愛している。そしてアメリカの文化を誇りに思っている。
"Japan Cool"という言葉が生まれている。このジョークに出てくる日本車や食べ物、マンガ、アニメなど、日本の提供する"Cool"(格好良さ)への賛辞である。そして、"Japan Cool"に憧れる子どもや大人が世界中に増えつつある。それは軍事力や経済力とは次元を異にした一種の国際競争力である。
(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)
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