「魅力ある人」となるには、「嫉妬心」や「劣等感」を昇華し、プラスのエレルギーに転化する必要があります。
そのために必要なこととして、一つには、やはり「嫉妬心」や「劣等感」の対策です。嫉妬心や劣等感というものは、学生時代のころから持つ人が多いのではないでしょうか。今であれば、小学校時代からすでに始まっているかもしれません。
小学校、中学校、高校では、「学業ができるかできないか」ということから始まり、「スポーツができるかできないか」、「異性にもてるかもてないか」、あるいは、「周りから好かれるか嫌われるか」など、いろいろなことがあるでしょうし、それで劣等感を感じる人は大人になっても大勢いるでしょう。
それから、自分よりも恵まれていると思われる人も、当然ながらいるだろうと思います。
例えば、勉強がよくできる人や英語がよく話せる人、スタイルがよい人もいるでしょう。
あるいは、親が金持ちで、「夏休みにちょっとスイスで保養してきました」などと言うような人もいるでしょうが、こういう人には腹が立つものです。「自分は軽井沢も行ったことがないのに、スイスだと?」と思えば、四、五人集まって、「あいつ、ちょっといじめてやろうか」と“談合”したくなるかもしれません。
それは、いいところの家柄なのかもしれませんが、「スイスに別荘があるんだって!」などと聞くと、どうしても気持ちが収まらなくなって、多少いじめたりしないではいられなくなったりもします。
このように、劣等感と嫉妬心というものは、わりあいに身近なところに存在するものではありますが、やはり、克服しなければなりません。
こうしたものは、学生時代だけではなく、大人になってからも続くものです。他人との比較において、劣等感や嫉妬心を感じるところは続いていきます。これを克服しなければ、残念ながら、「あのようにはなりたくない」と思われるような魅力のない人間になっていくのです。
成功していく人の特徴は、この劣等感や嫉妬心をうまく昇華させ、その力を自分のプラス・エネルギーに転化していくことが上手なことです。実に上手だと思います。
それが上手な人は、この劣等感を、ほかの人に対する「勇気の原理」として使っていくこともあります。
例えば、松下幸之助氏などは、自分が小学校中退であることを隠さずに、繰り返し繰り返し語っていました。
そういう人が会社を大きくして、とうとう高卒の人を使えるようになり、次に、高専卒の人を使えるようになり、大卒の人を使えるようになり、ついには一流大学の技術者も入ってくるようになりました。実に不思議なことですが、それを隠すことなくやっていたのです。
本来、嫉妬心や劣等感を感じてもしかたのないようなところを、むしろ、社員がみな、自分よりも偉く見えていたため、「こんなに偉い人に大勢来てもらって、本当に助かる。ありがたい」という気持ちを持って、人を使っていました。
最近の人では、稲森和夫氏にも多少そういうところがあります。
旧制鹿児島中学を受けて落ちたり、阪大を受けて落ちたり、学生時代は劣等性だったようですし、会社の入社試験でも、当時の主な電機メーカーはほとんど落ちてしまい、周囲の人たちが知らないようなところに入っています。そこで何年間か頑張ってから独立するときに、自分についていきたいという人がいたので、会社をつくって大きくしたのです。
その後、稲森氏は京セラをつくり、第二電電(現KDDIの前身)をつくり、そして、最近では、JALの再建に取り組んだことなどがよく知られています。
この人も、そうした劣等感を持っていたことを明らかに開示しながら、「そういう自分でもここまで成功できたのだから、私より秀才の人たちは、もっとできて当然ではありませんか」というように、「勇気の原理」を与えています。
これも客観的、社会的に見て、一定以上の成功がなされた場合には、美談に変わっていくことがあるわけです。
しかし、そこまで到達していない場合は、単なる自己卑下になったりすることもあるので、その加減はとても難しいところがあります。
ただ、こうしたマイナス感情も上手に使えば、ちょうど百メートル走のときに使うスターティングブロックのようなもので、反動を使って速度を増すチャンスになるので、やはり、その劣等感や嫉妬心と思えるものをスプリングボードとして、プラスに転じていくことを考えるとよいでしょう。
そして、まだあります。
それは、リーダーの資質の一つである「落ち込んでもすぐに復元する力」です。
本来ならば落ち込むはずのところを「すぐに復元する力」のある人には、一種の「威神力」が備わってくるらしいのです。そして、これがある意味において、リーダーの資質の一つでもあるでしょう。
普通の人であれば、めげてしまったり、落ち込んでしまったり、あるいは、がっかりしてしまったりするようなところから、どのようにして立ち直っていき、さらにまた進撃を続けるかということは、リーダーとして非常に大事な資質の一つなのです。普通はなかなかそのようにいかず、自己憐憫に入ってしまう期間がかなり長くなるものです。
若いころの自分には、そのような気持ちがずいぶんあったような気がします。
しかし、その後は“へこむ”ようなことがあっても、しばらくすると「復元する」ように変わっていきました。一日から数日、あるいは、週末を通り越したら翌週には、「復元してくる力」というのは、意外に大事な力だということが分かっていったのです。
---owari---
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