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お母さん議員の教育再生(後編)

2021年03月24日 | 日本
60年ぶりの教育基本法改正の原動力は、家庭と地域の実情を知るお母さん議員だった。

(学力調査で見えてきた学力格差)
その後、安倍総理(第一次)は辞任したが、入院先から山谷議員に電話をしてきて、「法律を変えただけではまだ十分でないから、引き続き補佐官として現場の制度調整をやって、予算をつけるまで見てほしい」と言った。

安倍総理の山谷議員への期待は後継内閣にも引き継がれ、次の福田内閣では補佐官として教育制度を整え、麻生内閣では大きな教育再生予算をつけることができた。

制度としての大きな柱は、全国学力調査であろう。43年間、日教組の反対で行われていなかったが、それを安倍内閣で再開し、あわせて体力調査、生活習慣調査も開始した。

この調査の結果、学力格差の存在とその要因が見えるようになってきた。学力テストで1、2位となった福井県、秋田県は3世代家族が多く、「早寝早起き朝ご飯」がしっかりできており、地元の行事にも積極的に参加し、ふるさとの偉人の話などをよく教えている。子供たちが家庭や地域社会という横のつながりと、歴史伝統という縦のつながりの中で育てられているのである。

一方、日教組左派活動の活発な北海道、沖縄県、高知県、三重県、大阪府などは学力調査で下位に並んだ。「子どもの権利」などと甘やかされ、「ゆるみ教育」しか受けず、また先生も組合活動で「自習」ばかりとなれば、学力低下も当然である。

大阪の橋下知事は山谷議員の部屋にやって来て、「大阪の子供たちがかわいそうだ。子供がバカなんじゃない。大阪の行政が不誠実なんだ」と話した。その後、大阪府は朝ご飯と挨拶、読書、宿題、補習を徹底的に行うようにしたら、3回目の学力調査では35位まで浮上した。

健康を増進しようとしたら、まず健康診断を受けて、どこが悪いか判断するのが科学的アプローチである。それが43年間も日教組の反対で行われていなかった。まさに「戦後の宿題」の一つが解決されたのである。

しかし民主党政権になって事業仕分けにより、全国学力調査はサンプルをとる方式に変わった。全国学力調査をやめても浮くのはたった21億円、高校無償化4,500億円のわずか0.46%に過ぎない。

民主党を支える日教組の要求通り完全廃止にしたかったが、さすがに国民の7割以上が賛成しているのを、そこまではできなかったのだろう、というのが、弊誌のかんぐりである。

(縦と横のつながりの中で子供を育てる)
家族やふるさとという横のつながり、伝統文化という縦のつながりの中で子供を育てていく、という考え方を、どう具現化していくか。山谷議員は、これまた現場主義のお母さん議員らしく、心配りのこもった制度を作っていった。

たとえば「放課後子どもプラン」。地域ボランティアと子供たちが放課後に遊び、学べるという制度で、各小学校に440万円の予算をつけた。学校だけでなく、家庭、地域、産業など、「社会総がかりで教育再生を」という考えで、教育現場からの評判も良かった。

縦のつながりとしては、学習指導要領に、神話、昔話をたくさん入れることにした。唱歌、神話・民話・昔話、ふるさとの偉人伝などの教材を地方の教育委員会がつくる場合には、国がお金を出す仕組みを作った。

たとえば山口県の吉田松陰ゆかりの明倫小学校では、30年ほども松陰の言葉の朗唱を続けている。山谷議員が訪問した時には、1年生の教室で、子供たちが背筋を伸ばし、あごを引いて「今日よりぞ 幼心を打ち捨てて 人と成りにし 道を踏めかし」と朗唱していた。

武道の授業も、中学男女必修となった。「道」を究める精神性、礼に始まり礼に終わるという相手を尊重する心、平和を願う心を育ててほしい、との願いからだ。柔道、剣道、相撲の3種目が学習指導要領に明記され、合気道や空手道、弓道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道も地域の実情に応じてすすめている。

中学校で武道場を地元の木材でつくる場合は、満額国庫補助とするという支援を決めたが、これも民主党政権でストップされ、残念がる市長たちの声が山谷議員に寄せられているという。

(国民のあげた「教育再生」への声)
民主党の政権奪取により、かつての日教組路線が復活し、山谷議員が中心となって進めてきた教育再生の動きがストップしていた。しかし、ここに来て、また潮目が変わりつつある。

民主党政権によりサンプル抽出方式に改められた全国学力調査だが、2010年度は、サンプルとして抽出されなかった小中学校の63%が参加を希望し、結局抽出された学校と合わせて、参加率は73%に上った。秋田、和歌山などの11県では県内の全公立小中学校が参加、福井、大阪など10府県でも90%を超えたという。

こういう教育現場の圧倒的な支持を受け、文科省は全員参加方式で数年に一度行うという案を専門家会議に示し、多数の支持が得られた。民主党政権に気を使ってか、毎年実施とはしていないが、いずれ完全復活となるのではないか。

政権さえとれば何をしても良いと思っている民主党の独裁的な日教組路線に対して、国民が自らの声を上げたということだろう。

教師、父兄、地域住民などみなが教育再生を考え、その声を山谷議員のような現場主義の政治家が吸い上げて国政に反映していく、それこそが民主政治のあるべき姿である。そしてそれは国政再生への道でもある。
 
(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)

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