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挫折に負けない「見方・考え方」をつくるためのヒント⑩

2024年01月23日 | 人生
(反対運動に屈せず、信念を貫いた岸首相)
最も大きな山場だった六十年安保は、岸信介首相のころの出来事です。
そのときには首相官邸もデモ隊に取り囲まれてしまいました。首相官邸を警備している警察は、「首相、早く逃げてください。もう護り切れません。警察の力では無理です。これはもう革命ですから、命の保障はできません」と言ったそうです。そういう内部の事情が書かれたものを読んだことがあります。

そのようななかにあっても、岸首相は、「日米安保条約を結んでいるほうが日本のためになる」という考えを貫き、安保条約の改定を乗り切ったわけです。

そして、すぐに岸首相は退陣を表明しましたが、その後、暴漢に腿(もも)を刺され、重傷を負っています。まさに、“革命前夜”とも言うべき時代であったと言えるでしょう。

しかし、その結果を現在の目から見ると、やはり、「安保条約を破棄しない」という判断のほうが、あのころ反対していた多くの人の見方よりも正しかったように思います。

(安保条約を破棄していたら、日本は“地獄”になっていた)
あのとき、もし日本が左側の陣営に屈して安保条約を破棄し、旧ソ連や中国などに付いていたら、その後の日本の繁栄はなかったでしょう。あるいは、もっと悲惨な時代になり、国民のうちの一千万人ぐらいが殺されてしまっていたかもしれません。多くの人が「思想犯」として捕らえられ、殺されるようなおそれもあったのです。

当時は、北朝鮮が「地上の楽園」などと言われ、理想的な国のように言われていた時代です。そして、日本のかなりの数の人は、「日本を、ああいう国のようにしたい」と考えて安保闘争などをしていたわけですが、実は、その多くの人が間違った情報に踊らされ、北朝鮮に幻想を持っていたのです。

その後、もし日本が北朝鮮のようになっていたら、それは大変な不幸であり、地獄のような状態になっていたでしょう。仮にそうなっていた場合には、読者のみなさんの身内も、かなり殺されていたはずです。しかし、安保の破棄をしなかったことによって、実際には、そうはならずに済んだのです。

このように、安保闘争では大勢の人が挫折感を味わいましたが、結果を見ると、「負けて良かった」ということもあるのです。

(安保闘争に挫折して、“最悪”を免れた政治学者)
六十年安保当時、理論的支柱であった一人に、丸山眞男という人がいます。彼は、当時、東京大学の政治学の教授であり、学者の立場から安保闘争を煽(あお)っていました。しかし、前述したように安保闘争は失敗します。挫折した彼は、教授職を早めに辞め、その後も、あまり実のある仕事をしませんでした。

彼が死後どのような世界に還ったかを霊的に見ますと、天国ではなく地獄に行っていたのです。彼は人間として悪人ではありません。また、天才肌の学者であり、尊敬もされています。東京大学の政治学には、丸山学派といって、彼の弟子がたくさんいます。このように評価されている人が、なぜ、地獄に堕ちるのかというと、それは、人々を思想的に間違った方向へ導いたからです。

その意味で、丸山眞男は、挫折して教授を早めに辞めましたが、それは“正しい挫折”だったと言えます。生きている間に挫折が与えられることは、かえって、良かったのです。もし、安保闘争が成功していたら、彼は、もっと深い地獄に堕ちて、サタン(悪魔)と呼ばれる、多くの人々を迷わせ狂わせる存在になっていたかもしれません。

その後、七十年安保のころに起きた学園闘争の様子を、当時、学生であった私もテレビで見た記憶があります。ヘルメットを被りマスクをつけた学生たちが、東京大学の安田講堂に立てこもり、取り囲んだ機動隊から放水されているシーンを見ました。

彼らは、授業をボイコットしたり、入学試験を中止させたりして、大勢の人に迷惑をかけましたが、結局、彼らの運動は、一種の退行現象、幼児返りであったと言えます。「大人になりたくない学生たちが、社会人としての責任を感じないまま、ただただ暴れていた」という要素がかなり強かったと思います。

革命のような大きな運動になると、ある程度の人数の意志があっても失敗することがありますが、そもそも、やろうとしていたことの結論が間違っていたならば、挫折したほうが、結果として良かったということもあるのです。

安保闘争をしていた人のなかには、いまだに挫折感を抱いている人も多いようですが、どうか、そういう観点も知っていただきたいと思います。

---owari---
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