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田んぼに蓮華(れんげ)の花が咲いているのはなぜ?

2019年04月14日 | 日本
みなさん、春になると一面にピンクの小さな花が咲いている風景を見られたことありますよね。近くでみると、とても可愛い花です。この小さな花は、レンゲという花ですが、この花が咲いている田んぼとそうでない田んぼがあります。レンゲは自然に咲いているのでしょうか。調べてみました。

レンゲの開花時期は4〜6月頃。和名は「げんげ(紫雲英)」。これは、花が一面に咲いている様子が、たなびく紫の雲のように見えるというところから名付けられています。一般には「れんげ(蓮華)/れんげ草(蓮華草)」と呼ばれていて、漢字には蓮の文字が使われています。これは、花びらが蓮(はす)の花に似ているから「蓮の花に似た草」から付けられています。

「れんげ草」は春の季語であり、「れんげ畑」は「春の風物詩」でもあります。レンゲのゆでた若芽は食用にもなるそうです(おひたし、汁の実、油いため他)。また、民間薬として利用されることがあります(利尿や解熱など)。レンゲの花を歌ったわらべ歌もあり、「春の小川」などがよく知られています。

「れんげ草」の花言葉は、「あなたと一緒なら苦痛がやわらぐ」「心がやわらぐ」です。これは「れんげ草」に薬効があることに由来しているそうです。

それでは本題に戻ります。
レンゲは自然に咲いているわけではありません。農家の人が田んぼの稲を収穫した後に、田んぼに種を蒔いているから、レンゲは咲いているのです。ただし、咲いたレンゲの種が風で飛んで行って咲かせることはあります。

では、なぜわざわざレンゲの種をまくのでしょうか。
それは、レンゲが「緑肥(りょくひ)」になるからです。緑肥とは、草などを青いままで土にすきこんで、栽培植物の肥料とするものを意味します。

レンゲは、「マメ科」の植物ですが、根っこのところにある「根粒」というこぶに「根粒菌」という細菌をすまわせ、根粒菌から養分をもらっている。根粒菌には、空気中の窒素を植物の使える形に変える特別な能力があるのです。このため、レンゲには土を肥やす効果があり、稲を植え付ける前にレンゲを作っておいて、土の肥料分を増やしておくのです。

植物にとって窒素は重要な肥料ですが、いろいろな状態があって、植物が使える状態は限られています。レンゲは根粒菌に、すむ所と少しの養分を与えて、その代わりに肥料としての窒素分をもらうという共生関係を結んでいるのです。

つまり、レンゲ全体が、窒素をたくさん蓄えた肥料みたいなものとなり、農家は田植えの前、このレンゲを機械で土の中に混ぜ込むのです。やがて腐葉土のように分解されて、土の中の肥料分が多くなるということです。レンゲは自然の有機質肥料100%の土づくりとなります。

このような「レンゲ農法」は、昭和30年代中ごろまでは日本のいたるところで行われていました。しかし、第二次世界大戦後の食料不足で大量のお米が必要となり、政府は化学肥料を使用した栽培を導入し、生産量の増大を目指しました。

このころから化学肥料全盛の時代となり、手間のかかる「レンゲ農法」はほとんど見かけることがなくなったのです。

結果、収穫量は増大したのですが、化学肥料の使用によって稲が病気になり、それに対する危険な農薬を使うようになっていきました。その農薬によって天敵である虫を撲滅してしまったり、田んぼの中の生物を死滅させてしまったりと、自然の法則を無視して環境を破壊していったのです。

昭和も終わる頃、「これからの子どもたちには安全な米を食べさせてあげたい」という想いから、再び「レンゲ農法」を見かけるようになってきました。「レンゲ農法」が産み出すお米は、安心して食べられる伝統的なお米なのです。

緑肥に使う植物は、ほかにもあります。レンゲと同じマメ科のクローバーも同じ効果があります。クローバーは「幸運の四つ葉」で有名ですが、昔の子どもたちは花や茎を編んで、花かんむりを作って遊んでいることを思い出しました。

また、レンゲは花から蜜を採集することもできるので、ミツバチにとっても美味しい花なのです。そして、私たちもレンゲのお陰で美味しいお米がいただけます。素晴らしい景観も楽しめる素敵なお花ということです。

最近は田んぼが減ったこともあり、レンゲ畑は減っていますが、安全なお米作りや環境・景観のためにもレンゲ畑を増やしていこうという動きもあります。ぜひとも後世に、この「れんげ草」の咲くきれいな景色を残したいものですね。

---owari---
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2 コメント

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Unknown (Prometheus)
2019-05-04 00:01:43
れんげで思い出すのは、高校の国語で習った三好達治の「いにしへの日は」という詩です(作品中では「げんげ」という表記になってます)。
クローバーと言えば、これも高校の時に遠足で行った公園で、一角にあるクローバーは四つ葉だらけでした。その後何度となく探しに行くのですが、どうしても見つかりません。
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はじめまして (このゆびとまれ!です)
2019-05-04 15:56:46
Prometheusさんへ

コメントをいただき、有難うございます。
久しぶりに三好達治さんのことを思い出しました。

「いにしへの日は」 ~三好達治詩集より抜粋~

いにしへの日はなつかしや
すがの根のながき春日を
野にいでてげんげつませし
ははそはの母もその子も
そこばくの夢をゆめみし

ひとの世の暮るるにはやく
もろともにけふの日はかく
つつましく膝をならべて
あともなき夢のうつつを
うつうつとかたるにあかぬ
春の日をひと日旅ゆき
・・・・・

菅の根のように長くのどかな春の日に、母と子が一緒にレンゲを摘んだいにしえの日を懐かしむ詩だと思っています。そして、音律がとてもいいですね。

三好達治さんは別の詩でも、
「春はなんと樂しいのだろう
地球はなんとゆるやかにめぐることだらう
・・・
ゆるやかに白い雲の飛ぶ
春の日はしぼりたての牛乳のやうだ
・・・
われらまたこの春の日を再び愛する時はない
ああ春はわれらの呼吸をふかくし
春はわれらの心をふかくする」
と表現されています。

この「いにしへの日は」には「光陰矢の如し」の感じや「そんな日は飛ぶように過ぎていく」といった感情も私には読み取れるのです。

三好達治さんの詩ではないですが、さればこそ、「命短し恋せよ乙女」という言葉にも、私は惹かれています。
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