数学者としてたいへんな業績を残した岡潔(おかきよし)さんの話をしておきましょう。
岡さんは京都帝国大学卒業と同時に同大学講師に就任し、1929年に同大学助教授に昇進すると、1929年から3年間、フランスに留学しました。
そこで何をやるかですが、ヨーロッパでは何百年間、誰も解けなかった問題が三つあった。彼は、それでもやるかと取り組みました。当然、どうやって解くか教えてくれる先生はいないし、解くための参考書もない。ただ解けないとわかっている問題が目の前にあるだけです。
そのとき彼は、まずは何冊か持っていっていた松尾芭蕉の俳句の本を寝転がって読んだそうです。
そこには絶対答えは書かれていませんが、まずはゆっくり、のびのびしようということだったのでしょう。
そうして芭蕉の俳句の本を一年間読んでいたら、ある日突然、三つとも解けたと言うのです。
彼の著書『春宵十夜(しゅんしょうじゅうわ)』には、情緒や情操を鍛えることの大切さが書かれています。
(日下公人著書「『日本大出動』トランプなんか怖くない(2016年6月発刊)」から転載)
---owari---
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